タワーマンションが立ち並ぶ地域では中学受験の名門塾が集中し、“塾銀座”と称されることもある。そんな様子が東京だけではなく、埼玉でも一部地域で見られるという。著書『中学受験 やってはいけない塾選び』が話題のノンフィクションライター・杉浦由美子氏がレポートする「タワマンと中学受験の関係性」の第5回。【全6回。第1回から読む】
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中学受験とタワマンの関係について、描いたコミックエッセイ『タワマンに住んで後悔してる』(KADOKAWA、窓際三等兵原作・グラハム子漫画)。この作品を私が読んだきっかけは取材先で中学受験の有名な講師が話題に出したからだ。
このコミックエッセイの中で、商社に勤めていた夫が独立起業に失敗し、埼玉に引っ越す主婦、恵が登場する。彼女はパートに出て、半額になったお惣菜を買って帰り、それを家族でほおばるようになるが、競争から降りたことでホッとするという描写がある。
このストーリーに私は違和感があった。なぜなら、一記者として知る限り、もっとも受験競争に前のめりな人が住んでいるのは埼玉だからだ。その埼玉・大宮地区のタワーマンションに引っ越したことで「後悔している」というB子さんの話を紹介しよう。
県内に人気の私立一貫校が複数あり、都内にも通いやすい
「私の印象では、もっとも教育熱心な人たちが多いのは埼玉です。住宅費を抑制するために埼玉に住んで、浮いた分のお金を教育費につぎ込む層がいるからです」(大手塾現役講師)
実際、昔から南浦和は“塾銀座”として知られ、各種の塾が多いのが特徴だ。中学受験の塾も多く存在する。
サピックスの講師が独立して立ち上げたグノーブルも今年、南浦和に新校舎を開校した。サピックス同様に難関校対策に強みのある塾であり、その塾が少子化の中、南浦和ならば生徒が集まると判断をしたわけだ。難関校を目指す層を取り込めるからだろう。
埼玉には浦和明の星、栄東などの難関私立中高一貫校があり、都内の学校にも通いやすい。浦和や大宮から私立最難関の開成や豊島岡には1時間以内で通える。最近も港区の私立一貫校の教諭と話したが、埼玉から通う生徒も目立つと話していた。そういう都内へのアクセスのよさもあって、埼玉は昔から中学受験が盛んだ。