『M-1グランプリ2023』(テレビ朝日系)で優勝した令和ロマン。高比良くるまと松井ケムリの2人が難関中高一貫校から慶應大学に進学した高学歴芸人でもあることも話題になっている。『中学受験 やってはいけない塾選び』の著者であるノンフィクションライター・杉浦由美子氏は「受験戦争と賞レースの共通点」に注目する。なぜ高学歴芸人が賞レースで台頭しているのか、杉浦氏が読み解いていく。【前後編の前編】
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漫才頂上決戦「M-1グランプリ2023」は、吉本興業の若手コンビ・令和ロマンが優勝した。
当日、敗者復活戦が終わると、同じ会場でそのまま決勝のパブリックビューイングが行われた。大スクリーンに決戦の様子が映し出され、敗者復活戦の客がそれを見る。令和ロマンが最終決戦に進出することが決まると会場が大きく沸いたという。若いお笑いファンから絶大な支持を受けていることが分かる。
あるお笑いファンの女性がいう。
「令和ロマンはテレビや賞レースの予選ではコント漫才をすることも多いですが、普段の寄席では肩の力が抜けたしゃべくり漫才もしていました。これがまるで“浅草の師匠”みたいな風格があって、話術も巧みで聞きいってしまいました。若手とは思えないほどの実力派コンビなので、M-1の決勝に出ると決まった時に“今年は令和ロマンが優勝するんじゃないか”と思ったお笑いファンも少なくなかったのでは」
その実力派の人気若手コンビが優勝したことで、お笑いファンたちは大いに盛り上がったが、その一方で、SNSの中学受験界隈(中学受験生の親や塾講師、家庭教師などのアカウント)も令和ロマンの優勝に反応をしていた。2人とも中学受験を経験し、高比良くるまが本郷、松井ケムリが桐朋を経て、慶應義塾大学に入学し、お笑いサークルで出会っている。ちなみにケムリはサピックスに通って、中学受験対策をした。
「本郷中学校・高等学校 入試広報部【公式】」のXアカウントは、令和ロマンの優勝を受けて、「優勝おめでとうございます!」と投稿していた。塾講師や家庭教師などの受験対策関係者は「お笑いも高学歴の時代。子どもたちには学歴を得たら選択肢が拡がると教えられる」というふうに盛り上がっていた。
令和ロマンだけではなく、M-1では学生お笑いサークル出身の高学歴芸人たちが台頭してきている。なぜ、お笑いというエンタテインメントのジャンルで、高学歴者の活躍が目立つのかについて、受験戦争の意味という視点から考えてみよう。