生命保険への加入時に付ける「医療特約」。安心感は何物にも代えがたいが、本当に必要な「特約」を見定めることも大切だ。都内の50代男性会社員は「入院特約がまったく役に立たなかった」と憤る。
男性は社会人になった22歳頃、死亡保障300万円が主契約の生命保険に加入したが、その際、営業マンに勧められ「疾病入院特約」「災害死亡特約」「災害入院特約」の3つを付加したという。
「失敗したのは、主契約より保険料が高い『疾病入院特約』を付けたことです。病気で5日以上入院したら1日7000円が下りる特約なのですが、これまで入院したのは、盲腸の手術を受けた1回のみ。しかも3日で退院したので、入院給付金は一銭も払われなかった」
この男性の場合、死亡保障の保険料支払いが毎月3000円弱。一方、疾病入院特約の保険料は月5000円ほど。年間で約6万円の出費になる。
特約だけで約30年間、総額180万円超の保険料を払ってきたが、一度もその恩恵に与ったことはない。なぜ、高い特約を今も継続しているのか。
「この保険の払込期間は60歳までですが、主契約も他の特約部分も保障期間は終身なんです。あと10年払えば一生涯カバーされると思うと、今さらやめたらもったいない」
だが、男性が60歳までに支払う保険料の総額を超える入院保障を得るには、通算で1年近くの入院期間を過ごさなければならない。ファイナンシャルプランナー(FP)で消費生活アドバイザーの丸山晴美氏が言う。
「入院期間が短期化するなか、よほどのケガや病気でなければ、男性が払った保険料を超える入院保障を得られることはないでしょう。だからと言って終身の入院保障が得られる手前で解約すれば、これまでの保険料が全てムダになってしまう。
そのような判断の難しい局面を招かないためにも、医療保険の保障内容はきちんと把握するべきです。医療費を公的保険で賄えると判断できたら、民間の医療保険は特約も主契約も含めて早めにきっぱり解約することも選択肢のひとつです」
一見すると、医療保険や特約の“手厚い”保障は魅力的に映るが、費用対効果の見極めが必要だ。
※週刊ポスト2024年2月2日号