遺産相続を巡って「子供のうち誰か1人が介護を担っていた」というケースは家族内で揉めごとになりやすい。
親の介護をしていた子やその配偶者が、他の相続人(兄弟姉妹)から親の財産の使い込みを疑われる場合がある。『トラブルの芽を摘む相続対策』などの著書がある吉澤諭氏(吉澤相続事務所代表)が言う。
「同居する子が要介護の親から通帳や印鑑、キャッシュカードを預かり、そこから介護費用を支払っているような場合は疑われやすい。たとえば、父親が亡くなった後、母親の所持金2000万円を長女が管理して介護をしていたが、数年後に母親も亡くなった時に残高が500万円しかなく、『たった数年で1500万円も使うはずはない。長女が私腹を肥やしたのではないか』と疑いをかけられる、といった話はよくあります」
こうした諍いを回避するには、基本的に「お金の出入りをすべて記録する」ことが不可欠だ。吉澤氏が続ける。
「他の相続人から『自分の財布に入れたのではないか』『遊興費に使ったのではないか』と言われないために、親の財産を私的に流用していないことを自身で確認し、確実に証拠を残しておく必要があります。
私が相談を受ける際は、何にいくら使ったのか、レシートを貼りつけて『介護ノート』をつけるようにアドバイスしています。レシートがない場合もメモを残したり、通帳からお金を引き出す時もその用途を記録しておくべきです」
使い込みと指摘されないような備えが必要なのは当然で、きちんとした記録が残っていればある程度の対応は可能だ。