11月の米大統領選に向け、ドナルド・トランプ前大統領(77)が予備選での快進撃を続けている。トランプ氏再登板なれば世界経済に大きな影響を与える。欧州中央銀行総裁は、「関税や、予想もしない厳しい決断がある可能性に備えるべきだろう」と欧州市場の結束強化を呼びかけた。第2次トランプ・ショックは当然、日本にも及ぶ。
では、何が起きるのか。トランプ氏は大統領選で次の公約を掲げた。
「就任1日目にEV(電気自動車)の義務化を撤回する」
「見たことがない大減税を実施する」
「グローバル化を唱える人を政権から排除する」
経済ジャーナリストの森岡英樹氏が語る。
「バイデン政権が実施してきた経済、通商、金融政策をすべてオセロゲームのように覆し、前回のトランプ政権の政策に戻すということです。しかも、合衆国憲法では大統領は2期までと定められているため2期目のトランプ氏はより過激で強権的になる恐れがある」
「アメリカファースト」を掲げるトランプ氏は極端な保護主義政策を取る。前回は環太平洋経済連携協定(TPP)から離脱した。バイデン政権は代わりに「インド太平洋経済枠組み」(IPEF)という新たな自由貿易の枠組みを立ち上げたが、トランプ氏は大統領に当選したらこれも破棄すると公約している。米国の極端な政策転換は世界経済を混乱させる。
日本に影響が大きいのは「関税の引き上げ」だ。
トランプ氏は中国からの輸入品に60%超の関税を課し、それ以外の国からの全輸入品にも10%の関税を導入すると打ち出している。
「日本製品への10%関税は輸出産業に打撃だが、それ以上に、中国製品への高関税は中国の景気を冷やし、中国市場への依存度が高い日本経済全体に深刻な影響を及ぼす可能性がある」(森岡氏)