企業側が採用時に求める経験やスキルはさまざまだが、どの仕事にも欠かせないのが「パソコンスキル」。とはいえ、その「スキル」の具体的な内容は関連資格でも持っていない限り不透明だ。お互いかなり曖昧なまま、「パソコン使える?」「使えます」といったやり取りをしていないだろうか。
関連資格を持っていればある程度実力を証明できるが、未所持の場合は難しい。ビジネスの現場において、相手が期待したスキルを持ち合わせていないこともあるようだ。困惑する現場の声を聞いた。
「パソコン、得意な方です」と言っていたのに…
メーカー勤務の40代男性・Aさんは、新人のパソコンスキルに驚いたことを明かす。
「10年ほど前までなら、パソコンを扱うのが得意なのは20~30代の若手から中堅クラスで、苦手なのはその上の世代というイメージでしたが、今はそうとは限りません。例えば若手社員の中には、書類作りにおいてワードを使うことはできても、『突然動かなくなりました』『行間がおかしくなって、直し方がわからない』などと言ってくる人もいて、応用がきかないというか……。
エラーがあった時に何とかしようとするのではなく、ただアタフタするだけの人も増えてきたなあという印象です」
Aさんは現在、“パソコンで何ができるか”について詳しく聞くことにしている。きっかけとなったのは、かつて自分のチームに“パソコンが得意”な新卒入社の男性社員が配属されたことだという。
「人事いわく、面接で彼は『パソコン、得意な方です』と言っていたというので、こちらも何も考えず、社内で必要な書類作りをやらせていたんです。するといつまでたっても出来上がってこない。
どうかしたのかと思って見に行くと、タイピングスピードがとにかく遅い。その他、ワードもエクセルも細かい機能が全然わかっていないようでした。悪戦苦闘している様子を見て不思議に思い、何が得意なのか聞いてみると、『ゲームとネット検索』とのこと。そりゃ社会人と学生でパソコンの使い方は違うよなと、こちらも反省しました」(Aさん)
そんなAさんは新卒社員に対し、「これだけはできてほしい」という能力を列挙する。
「私としては最低限、スムーズなタイピング、メールでのやりとり、ワードとエクセルの基本操作はできてほしいですね。とはいえ、いちばんあってほしい能力は、“わからなかったら調べる”こと。自分がつまずくような部分は、多くの場合“先人”がいて、その対策がネット上に載っていることがほとんどなので」(Aさん)