多くの企業で新入社員研修が始まる4月。近年は売り手市場の就職戦線が続き、入社直前の「内定辞退メール」や、新人の3割が入社後3年以内に辞める「3年3割問題」などが話題になり、若手社員の育成に悩む人事担当者や上司、先輩社員も多いのではないだろうか。特に今年の4年制大学出身の新卒社員は、進級がストレートなら大学入学1年目がまさにコロナ禍の始まりで、学生生活の多くを制約のなかで過ごしてきた。例年とは異なる特徴がある彼ら彼女らに、上司や先輩社員はどう接すればいいのか。フリーライターの岸川貴文氏が識者に聞いた。
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今年は例年より遅く、入学、入社を祝うように桜が咲き、新年度を晴れやかな気持ちで迎えた人も多かったろう。反面、新型コロナウイルス感染症が5類に分類されてから初めての年度明けとなり、不安も大きいに違いない。
とくに今年入社した大学新卒社員の多くは、大学入学1年目がコロナ禍初年に当たる世代。入学当初から講義はオンライン形式で、サークルや部活動、アルバイトも遊びもままならず、大学生活は部屋でじっとして過ごす日々が多かったという人もいるだろう。
「社会人としてやっていけるのか」と不安を感じているのは新社会人だけでなく、受け入れる企業の上司・先輩たちも同じかもしれない。「ただでさえZ世代との付き合いで苦労しているのに、コロナ禍で育った子たちをどう扱ったらいいのか?」——そんな悩みもあるだろう。
大学生活がまるごとコロナ禍だった「コロナ禍学生世代」は、どんな特性があるのか。『新しい教え方の教科書〜Z世代の部下を持ったら読む本』(ぱる出版)の著者で、新入社員向けのセミナーなどを手掛ける人材育成コンサルタント・北宏志氏は、今春出会った新入社員の多くから「コロナ前の世代に比べて目立つことを極端に避け、おとなしいという印象を受けた」という。
「就活時の面接を行った採用担当者も異口同音でした。そこにコロナの影響があるとすれば、圧倒的な経験不足が挙げられます。アルバイト、サークル、部活動、遊びも含めて、対人関係における実地での体験ができなかった。これらの活動のなかで自然と身につけていくはずの知識やコミュニケーションスキルが得られなかったのを、彼ら彼女らはうすうす感じていているのかもしれません」(北氏、以下同)