国内最大の鉄道会社であるJR東日本グループが、5月9日に金融サービス「JRE BANK」をスタートさせる。累計発行数1億枚超を誇る交通系ICカード「Suica」を強みに持つJR東日本グループが手を組んだのは、ネット銀行の最大手・楽天銀行だった。【前後編の後編。前編から読む】
JRE BANKは楽天銀行のインフラシステムを利用している。既存の銀行が持つインフラを使って金融サービスを提供する仕組みは「BaaS(バンキング・アズ・ア・サービス)」と呼ばれる。メガバンク関係者が語る。
「2020年の資金決済法改正により、金融サービス仲介業が創生され、銀行の決済機能が異業種にも開放された。これによって、様々な企業が銀行免許を取得しなくても、銀行サービスを自社の事業に組み込めるようになりました。IT技術の進展とスマホの普及が重なったことも、異業種の参入を加速させた。
既存の銀行側は、異業種との連携を広げる戦略にシフトしています。なかでも住信SBIネット銀行はJALや高島屋、ヤマダホールディングスなどとの連携を拡大して若い世代の取り込みを進めてきた。対抗したい楽天銀行が今回、JR東日本と手を組んだ構図です」
JR東日本は楽天銀行のシステムを使用する理由について、「JR東日本グループと同じく個人向けを中心ターゲットとしてサービス提供しているネット銀行のなかでも、最も幅広い顧客層から支持されていると考えられる楽天銀行と提携することとしました」(同社コーポレート・コミュニケーション部門)と説明する。
具体的にどんな連携があり得るのか。みずほ銀行OBで多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏は、次のような予想を立てる。
「現時点では、JRE BANKの口座と楽天IDは連携できず、JR東日本の施設利用などで楽天ポイントを貯めることもできませんが、将来的には“楽天ポイントで電車に乗れる”といったサービスも考えられます」
逆に“運賃支払いのポイントを使って楽天で買い物ができる”というサービスもあり得そうだ。現時点でのJR東日本の“経済圏”の弱みとしては、Suicaを持つ人の多さに比してJRE POINTが貯まる店舗が少ないことなどが指摘されているが、提携加盟店が500万以上ある楽天ポイントとの連携を深めれば、今後は状況が大きく変わる可能性がある。