テクノロジーの発展は、人々の生活だけでなくビジネスシーンにも大きな変化をもたらした。昭和や平成の時代とは、働き方や求められるスキルが様変わり。どんどん業務を効率的にこなせるようになる一方で、仕事量は減るどころかその“密度”が上がっている現実も無視できない。
仕事の効率化によって生産性が上がれば、企業業績も上がり、給料も増え、景気もよくなる……といいことのように思えるが、効率化が進む今の働き方に息苦しさを覚える人たちも増えている。それは、“コスパ”“タイパ”を重視する若者世代にとっても同様のようだ。彼ら/彼女たちはビジネスシーンのどんなところで「息苦しさ」を感じるのか――。そのリアルな声を聞いた。
オンラインミーティング普及で消えた“息抜きの時間”
IT企業勤務の20代男性・Aさんは、対面だった会議やミーティングがオンライン化され、「便利だしラクになった部分もあるけど、しんどいこともある」と明かす。
「コロナ以降、オンラインミーティングが当たり前になりました。移動時間がなくなったのは圧倒的にラクで、もはや対面でのミーティングをする意味がわからないレベルになってきています。
ただ、いつでもどこでもミーティングを突っ込むことができるようになってしまったため、これまでは移動中という“息抜き”ができる時間があったのに、それがなくなってしまいました。たとえば1日に2つの打ち合わせがある場合、11時に打ち合わせが終わったら、次の打ち合わせは社内なら30分程度、社外であれば電車移動を含めて1時間以上空けていたのに、今は間髪いれずに11時に次の打ち合わせを入れることができてしまう。自分で調整できればいいのですが、そういうわけにもいかず……。移動時間って、息抜きだったんだなと今さらながら実感しています」
オンライン化で効率化が進んだ一方、失われたのが「何気ないシーンでの息抜き」だったとAさんは言う。
「客先への移動がある場合、経由する場所なんかで“あそこでランチをとろうかな”とか、ちょっとした楽しみもあったんですよね。リモートワークの日だって、本来は通勤している時間に仕事をしているだけ。移動時間がなくて効率的かと思いきや、体を動かさないのでかえって精神的な疲労がたまっている気がします。チャットツールの通知にも恐怖を感じるときがあります。勤務中は『オンライン中』と表示されるので、逃げ場もない。
先輩たちには出先からそのまま帰る『直帰』という習慣があって、定時より少し早めに上がって飲みに行っていたと聞き、なんて良い時代なんだと最近思いました」(Aさん)