夫婦はいずれ、どちらかがひとり身になる。2人暮らしを前提としていた家財道具などの扱いにも困るだろう。いまのうちに夫婦で考えておかなければならないのが、「物」の整理だ。
配偶者を亡くした人の集いである「没イチの会」を主催する一般社団法人シニア生活文化研究所の小谷みどり代表理事によれば、パートナーを失った後、深い喪失感から遺品を整理することができない人が多く、「妻の生前から持ち物の処分について話し合っておくべきだった」と後悔するケースが散見されるという。
ダンカンさん「いまだ手付かずです」
2014年に乳がんで妻の初美さんを亡くしたタレントのダンカンさん(65)は、遺品について「いまだ手付かずです」と打ち明ける。
「妻と死別してこの6月でちょうど10年ですが、彼女が残した衣類や持ち物はいまもそのままです。思い出が残る彼女の物をどうにも捨てたくない」
初美さんの数百着の衣装はタンスにしまったままで、使用していたコップや初美さんが病で倒れた時に床に敷いていた絨毯に至るまで、すべて残しているという。
「まだ妻と一緒に生活していると思っています。いつかは処分することになるのでしょうが、僕が生きているうちくらいは妻の生きた足跡を残したい」(ダンカンさん)
初美さんが生前から細かく荷物を片付けていたため、もともと物が溢れる生活ではなかったとダンカンさんは言うが、そうではないケースも多い。
前出・小谷氏が語る。
「大量の遺品があり、それを処分できず自分の物まで溜まっていくというケースは散見されます。片付けが進まないまま高齢になれば体力的にも負担が大きくなる。そのままにしておくと相続時に子供にも迷惑がかかります。“思い出の品を捨てられない”という気持ちは分かりますが、できることなら夫婦が元気なうちに処分していい物と残しておきたい物を分けておくことが望ましいです」