中学受験の長い道のりのなかでは、子供を見守る“伴走者”として競争から退く判断が必要な場合があるかもしれない。しかし、それまで何年にもわたり時間と労力、多額の費用を割いてきた中学受験を途中で諦めることは、子供本人としても、保護者としても受け入れ難いだろう。それでも受験からの「撤退」を決めるなら、いつ、どんな仕方ですればいいのか。保護者の赤裸々な悩みを、フリーライターの清水典之氏が識者にぶつけた。(全5回シリーズの第5回。第1回から読む)
【シリーズ全5回】
■お金も時間もかかる中学受験 「偏差値下位の私立中学なら進学する意味はない」の意見を高校受験塾の現役講師はどう考えるか
■中学受験で“勉強から逃げる子”は晩熟タイプかもしれない 偏差値50台の私立中から高校受験で開成に合格する例も少なくない
■「高1でbe動詞がわからない」受け身で過大な量の勉強を続けた結果、中高一貫校の“深海魚”に 中学受験にありがちな「勉強を強制させられるリスク」
■スポーツや習い事をやめて勉強に専念させる価値はあるのか? 現役塾講師が明かす「中学受験最大のデメリット」
■「子供にトラウマを残しそう…」悩ましい中学受験から“撤退”の決断 現役塾講師は期限を重視、撤退後の勉強への向き合い方
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「中学受験」ブームの過熱で競争が激化している。習い事をすべてやめて受験に専念しても、みな同じように勉強しているのだから、現状維持がせいぜい。中学受験に対する適性がないと、波に乗りきれず、ずるずる成績が下がっていくことになりがちだ。
「撤退」の2文字が頭によぎるが、今までかけたお金と手間が無駄になってしまうようで、踏ん切りがつかない。想定していた子供の進路も不透明になり、今後の方針をどう切り換えればいいかもわからない。
そんな親たちの相談に、Xのアカウント名「東京高校受験主義」で知られ、この5月に『「中学受験」をするか迷ったら最初に知ってほしいこと』を上梓した高校受験塾講師の東田高志氏に答えてもらった。今回は、中学受験からの「撤退」に関して寄せられたこんな相談だ。
《子供のつらそうな様子から、中学受験からの「撤退」が頭をよぎるが、どのタイミングで、何を基準に、どう決断すればいいのでしょうか。諦めて撤退したことが、子供にトラウマを残しそうで踏ん切りがつきません。かといって“全落ち”するのはもっと怖い》(43歳、専業主婦女性)
そうした悩みを持つ保護者はたいへん多いが、決断するなら早いほうがいいと東田氏は言う。