世界で最も早く完全自動運転システムを完成させるのは、中国かもしれない。中国の工業情報化部、公安部、自然資源部、住宅都市建設部、交通運輸部は7月3日、ICVにおける「自動車・道路・クラウド一体化」応用実験を行う都市の名簿を発表した。北京、上海、重慶、オルドス、瀋陽、長春、南京、蘇州、無錫、杭州・桐郷・徳清、合肥、福州、済南、武漢、十堰、長沙、広州、深セン、海口・三亜・qiong(王+京)海、成都など、自動車関連産業の発展している20の都市(群)が実験モデル都市に選ばれた。
少し補足しておくと、ICVとはIntelligent Connected Vehicleの略語で、高速無線通信によってインターネットプラットフォームに接続された、最先端のセンサー、制御・ドライブシステム、AIなどを装備した次世代自動車である。
自動車、AIなどの開発を個々に進めるだけでは完全自動運転システムの構築は難しく、道路や交通システムまで適切なものに擦り合わせていかなければならない。企業や協力関係にある企業連合による努力だけに頼っていては限界があり、中央政府によるビジョンの提示や、資金調達面からのサポート、地方政府によるインフラ建設、各主体との調整などが不可欠だ。こうした複雑な作業は最初から法律やルールを決めて行っていたのでは遅々として進まない。まずは、地域を限定した上で、既存のルールや既得権益を超えて大胆に実践してみようというのが今回の“実験”であり、これは中国の伝統的な“改革”のやり方だ。
完全な自動運転システムを社会に導入することで派生する需要は大きい。自動車・部品、電池といったハードウエア、自動運転用アルゴリズム、専用のOS・アプリ、ビッグデータ・クラウド、安全で効率的な運航を管理するAIといったソフトウエア、道路、通信、データサービスなどのインフラ・情報通信処理サービスに至るまで、関連する産業のすそ野は広い。
さらに、半導体、新素材のイノベーション、膨大なデータ蓄積による新たなデータサービス、交通システム全体の核心的な進歩に伴う新たな需要の誘発なども期待される。完全自動運転システムの導入は経済、イノベーションを牽引するエンジンになる可能性を秘めている。