配偶者に先立たれてひとりになったら減ると思っていた出費が、意外にも変わらなかった──そんな出費の代表例が、電気やガス、水道光熱費などの「固定費」だ。
神奈川県に住む男性・Cさん(65)は昨年、妻を胃がんで亡くした。子供らはすでに独立していたので、男やもめのひとり暮らしが始まった。
ひと月後、水道代と光熱費の請求書を見たCさんは目を丸くした。
「妻の生前と金額がほとんど一緒でした。ひとりになった分、光熱費などは半分になると思っていたのですが、よくよく考えてみると基本料金は変わらないうえ、電気をつけている時間も一緒。
風呂も1回分のお湯に夫婦2人で入っていたわけだし、ひとりになったからといって湯量が減るわけじゃない。居間のテレビはつけっぱなしで、最近は夜が暑いから朝までクーラーをかけています。基本的に自炊なので、電子レンジやガスも毎日使うんですよね」(Cさん)
住居や自家用車にかかる費用
住居にかかる費用にも同様の傾向がある。シニア生活文化研究所の小谷みどり代表理事が指摘する。
「分譲マンションの団体信用生命保険(団信)は一般的に夫が被保険者であれば夫の死亡時にローン残債はなくなりますが、妻が死んでもローンは残る。賃貸物件の場合、ひとり暮らしになっても家賃は変わりません」
自家用車に関する出費も変わらない。1500ccの乗用車に乗る都内在住のDさん(70)が語る。
「任意保険(年6万円)、自動車税(年3万4500円)、車検(年7万円)、駐車場代(年24万円)にガソリン代を加えて、年間50万円ほどの維持費がかかります。妻を亡くした気晴らしでロングドライブする機会が増えたので、ガソリン代はむしろ増えましたね」
一方、妻が亡くなるとひとりあたりの生活費などの出費が増えやすい半面、妻の年金はカットとなるケースが多く、家計の収支は悪化しがちだ。
そこで重要なのが今のうちに夫婦で月々の固定費を減らしておくことだ。