夫婦はどちらかが必ず先に逝く。そのなかで、これまで置き去りにされてきたのが、「ひとりになった時のお金」の問題だ。ひとり身になっても変わらぬ出費から実は増えやすいお金まで、収支の現実を知ることが“いざその時”への備えになる。
高額になりがちな葬儀や供養に関連した費用
妻を亡くした直後から出ていくのが葬儀や供養に関連した費用だ。4年前に妻と死別した岩手県在住の男性・Aさん(72)が語る。
「葬儀に150万円、お布施に50万円の計200万円かかりました。その後も四十九日や一周忌、三回忌の度に法要代として約10万円ずつお金が出ていった。菩提寺で先祖代々の墓があるので、払わないわけにはいかなくて……」
Aさんは、「香典は1人5000円程度で40人ほどしか集まらなかったので、ほとんど葬儀代の足しにならなかった」と嘆息する。
佐藤葬祭代表取締役の佐藤信顕氏が語る。
「コロナ禍を経て一般葬を検討する人の割合は戻りつつありますが、依然として人が集まりにくい面はあります。一般葬の費用はおおむね150万~200万円程度と高額です。地縁が濃いといった事情がなければ他の葬儀を検討してもよいでしょう。直葬は通夜や告別式などの葬儀を省いてご遺体を火葬場に直接運び込むため、25万円ほどと格安です。ただし、住職を迎えるオプションなどもあるので事前に調べることを忘れずに」
Aさんのように、菩提寺によっては葬儀の後も四十九日や一周忌といった節目ごとに高額の供養代がかかることは珍しくない。
そのため、夫婦で葬儀の規模や墓を事前に決めておくことが重要だ。
「今は節目の法要をしない永代供養墓もあるし、長く続く出費を避けたいなら元気なうちに墓じまいをする選択肢もあります」(佐藤氏)