誰もが知っている東京土産のお菓子として「東京ばな奈」を思い浮かべる人は多いだろう。だが、東京土産の定番だけに東京在住の人がもらう機会は少なく、「実は食べたことがない」という東京生まれの人も珍しくはない。
全国区で知名度の高いこのお菓子のことを、どこまで知っているだろうか? 東京ばな奈の“知られざる秘密”について、販売・製造を手がけるグレープストーン(東京都中央区銀座)企画開発本部ブランドコミュニケーション部の広報担当者に聞いてみた。
目次
なぜ「バナナ」でもなく「ばなな」でもなく「ばな奈」なのか?
──「バナナ」でも「ばなな」でもなく、「ばな奈」。なぜ「奈」の一文字だけ漢字なのか?
広報:1991年11月22日生まれの「東京ばな奈」、実は「女の子」なんです。発売当時、女の子に「奈」を付ける名前が流行っていたそうです。皆さまのご家族や友人のように、この商品にも親しみを持っていただきたいという思いから、「奈」の漢字一文字を当てはめました。東京バナナでは記号的すぎるので、キャラクター的な要素を入れるために「ばな」をひらがなにし、女の子の名前に多く使われていた「奈」の漢字を使い、菓子箱のイラストもバナナの形の商品の頭上にリボンを着けたデザインにしました。おしゃれな東京ガールのイメージですね。
パッケージのサイズの決め手は出張ビジネス客
──「東京ばな奈」(8個入り)のパッケージは持ち運びに便利なサイズで、中は一つ一つ個包装のため、複数人への“ばら撒き東京土産”としても重宝するとの声もある。パッケージサイズはどのようにして決まったのか?
広報:ベーシックな8個入り商品のパッケージは、33年前の発売当時からA4サイズにしています。厳密に言えば、A4よりやや小さめのA4変形サイズです。当時、出張時にビジネス鞄やアタッシェケース、ブリーフケースを持っていらっしゃる方が多く、そうした鞄やケースにすっぽり入るサイズにしました。お客さまの取引先や家族へのお土産に選んでいただきたく、このA4サイズは現在も不動です。
個包装も当時からです。本物のバナナを丁寧に裏ごししてつくったバナナカスタードクリームを入れている生菓子ですので、衛生的な状態で個包装にしています。
発売当時に999円に値段設定した理由
──発売当初の「8個入り999円」の値段設定はどう決められたのか? なぜ「1000円」ではなかったのか?
広報:33年前の発売時に8個入りを999円の値段に設定したのも、お急ぎの場面で早く会計することはお客様にとって大事であるとの考えからでした。現在のようなキャッシュレス時代ではない頃です。「1000円にすれば紙幣1枚なので、もっと早い」と思われる方はいらっしゃるかもしれませんが、あえて999円にしたのは、お客様から1000円を渡された時、お客様に1円を返して「ありがとうございます」と伝える双方向のやりとりができたほうがいいとの思いからです。1000円だったらおつりを1円渡す、2箱だったら2000円受け取って1円玉を2枚渡す、と会計時のスピードアップにも配慮した値段設定でした。店舗では毎日開店前に、おつり用の1円玉をたくさん確保していたそうです。
その後、原材料の値上がり、消費税アップなどの背景もあり、2024年8月現在、8個入りは税込1296円です。
1年間に売れた「東京ばな奈」をつなげると“東京からハワイまで届く”
──「東京ばな奈」は年間どのくらい売れているのか、その売上金額は?
広報:年間売上額は公表していません。言えることは、1年間に売れた「東京ばな奈」を1個ずつ縦につなげていくと「東京からハワイまで届く長さ」になることはお伝えできます。発売初年度は「東京から山口県まで」でしたが、33年間の歩みで今はハワイまで届くようになりました。
韓国では「東京ばな奈パン」と呼ばれている
──海外からの旅行者にも人気があるが、海外ではどう呼ばれている?
広報:基本的には海外でも「東京ばな奈」のままです。ただ、韓国ではスポンジケーキをパンと言うようで、韓国の方には「東京ばな奈パン」という愛称で呼ばれて親しまれています。
英語に翻訳する時は「東京ばな奈ケーキ」と表記する場合があります。「ケーキ」と付けないとフルーツと間違えられてしまう場合があるためです。
「東京ばな奈の日」が制定されている
──「東京ばな奈の日」があるのは本当?
広報:本当です。8月7日が「東京ばな奈の日」です。一般社団法人 日本記念日協会から正式に認定されています。この時期に合わせてイベントやキャンペーンも展開しています。
【シリーズ「東京ばな奈・大研究」】
■第1回:知られざる「東京ばな奈」誕生エピソード “中央線の合羽橋”がなぜ東京土産をつくるようになったのか
■第2回:公式が教える「東京ばな奈」を美味しく食べる方法 「冷凍庫で冷やすと中のクリームがアイスクリームのようになる」
■第3回:【進化する東京定番菓子】「東京ばな奈」が手掛けるレトルトカレー、カプセルトイ、無人店舗…お菓子の枠を越えたビジネス展開
■特別編:【東京ばな奈・大研究】なぜ「奈」一文字だけ漢字なのか? サイズと価格の工夫、“東京からハワイまで届く”年間売上
取材・文/上田千春