バスの運転手不足が指摘されて久しい。警察庁が発表している「運転免許統計」によると、路線バスを運転できる大型二種免許保有者は2023年で78万2694人。20年前の2003年では117万4799人だったことを踏まえると、その数は約4分の3になっている。さらにはバス運転手の高齢化も問題となっている。日本バス協会の資料によれば、全バス運転手に占める60歳以上の割合は23.3%(2022年7月末時点)で、今後、バスの運転手不足が深刻化していくのは必至の情勢だ。
市民の足となる路線バス。乗客との距離も近く、接客業(サービス業)としての側面も持つ。そうしたなかでは生活に根付くインフラとしてあたたかい触れ合いもある一方、理不尽とも言えるクレームに晒されることも少なくないという。
最も多いクレームは「遅延」
西日本で路線バスの運転手をしている西山さん(仮名・50代男性)は、この道20年超のベテラン。日中は20分に1本程度のダイヤで、最も多いクレームは「遅延」だと明かす。
「路線バスは一般道路を走るので、事故や渋滞など、予測できない影響を受けやすく、常に遅延リスクがあります。無線で運行管理部と連絡を取りながら、随時運行状況の確認や調整を行ないますが、正直どうしようもないことも多い。
通勤・通学時に雨が降っていたりすると、送り迎えをする車も増え、バスも遅れがちになります。一度朝のピーク時に4日連続で遅延してしまったときは、高校生の保護者から『遅刻で学校の評定に傷がついたらどうするんだ』『時間を守るという責任感はあるのか』などと激昂されました」(西山さん。以下「」内同)