人生後半に待ち受ける最初の難題が、身近な人を見送ることだ。死期に備え、覚悟を持って準備にあたっていても、死後の手続きには多くの落とし穴が待ち受ける。遺言書に不備はなく、財産の分配も決定。スムーズに相続手続きが進んだ後に、「思わぬ問題が発生した」と語るのは70代男性L氏だ。
「相続後に父の借金が発覚したのです。正確には父自身のものではなく、古い友人が消費者金融から借金する際、父が連帯保証人になっていたようです。友人が返済できなくなり、数十万円の請求が私に来ました。財産目録にも書いていないことで、驚きました」
相続の紛争に詳しい弁護士の根本達矢氏が語る。
「相続では借金といったマイナスの資産のほか、被相続人が連帯保証人になっていた場合はその地位も引き継ぎます。相続したくない場合は3か月以内に『相続放棄』の手続きをする方法がありますが、個人間の借金や連帯保証人になっていた事実は相続後に判明するケースが少なくない」
父から相続した株が大幅に下落
大抵の場合は銀行口座の定期的な引き落としや、債権者からの連絡が来ることで借金の存在が判明する。あさひ相続手続相談所代表で司法書士の旭祐樹氏が言う。
「借金の有無を後から知った場合、3か月の期限が経過していても相続放棄が認められるケースはあります。ただし、相続財産を使ってしまうと相続放棄が認められない可能性が高くなるので注意しましょう」