ユニクロを運営するファーストリテイリングの柳井正会長兼社長が8月下旬に日本テレビの番組で「少数精鋭で仕事をということを覚えないと日本人は滅びるんじゃないですか」と発言し、大きな話題となっている。この議論を受け、楽天グループの三木谷浩史社長にジャーナリストの大西康之氏が緊急インタビューを行なった。
発端となった日テレの番組で柳井氏は、日本の労働生産性の低さと人口減少が深刻な問題であると指摘し、急激な円安もあって「世界基準で考えたら日本は年収200万円台の国」と警鐘を鳴らした。柳井氏は、日本が国際競争力を維持するためには、少数精鋭で効率的に働くことが必要だとも強調。さらに、世界から優秀な人材を集めるために、魅力的な働き方を提供する必要性を訴えた。
この発言に対し、ZOZOの創業者・前澤友作氏がSNSで「グローバリズムに迎合して自らその渦に飲み込まれてしまうような考え方には違和感があります」と反論するなど、議論が盛り上がりを見せていた。
こうした議論に対し、楽天グループの三木谷氏はどう考えるのか。本誌・週刊ポストの9月9日発売号ではジャーナリスト・大西氏が緊急インタビューを行なっている。以下、その要旨を紹介しよう。
楽天モバイルに外国人エンジニアが集まる理由
三木谷氏は、柳井氏の発言の真意は分からないとしつつも、「日本に元気がないことは事実でしょう」と見解を述べた。三木谷氏は、米世論調査会社・ギャラップの調査で日本の「熱意のある社員」の割合が5%で世界最下位であることを指摘し、日本の競争力の低下に憂慮を示した。
また、聞き手の大西氏が「働き方改革」の副作用として、日本人が「働かない国民」になっているのではないかという懸念をぶつけると、三木谷氏は、AIの普及や第四次産業革命に対応するためには、働き方の多様性と雇用の流動性を高める必要があると応じた。特に、AIやインターネットの進化に伴い、創造的な業務に従事する力が求められると強調している。
海外からの人材登用をめぐっては、楽天モバイルの外国人エンジニアの雇用についても言及。日本企業が国際競争力を持つためには多様な人材を受け入れることが重要だと述べて、「今、楽天モバイルに5000人の外国人エンジニアが集まっているのは、社内で英語が使えるからです。人数が多いだけでなく、『GAFAM』の人材供給源とも言われるIIT(インド工科大学)の卒業生を毎年200人ほど採用しています」と説明した。
さらに、三木谷氏は日本の賃金の安さについても言及。日本の個人所得税率が高く、シンガポールやインドと比較しても不利であると指摘した。法人税率も高く、これが企業や人材の流出を招いていると述べている。三木谷氏は、税率の引き下げが投資を呼び込み、経済成長を促すと主張した。