全国各地のスーパーや小売店から米が消え、価格が高騰する異常事態が続いている。今後の価格はどうなるのか──凶作や生産コスト増だけでは説明がつかない「米価のカラクリ」に迫る。【前後編の後編。前編から読む】
9月に入り小売店に新米が入荷するようになったが、消費者が気になるのは、やはり「価格」だ。都内スーパー店長が打ち明ける。
「今年の6月以降、卸売業者からの仕入れ値が段階的に上がっています。昨年は2000円程度で販売できた5kgの新潟県産の新米も、今年は3000円超に値上げせざるを得なくなっています。『米不足に便乗しているのでは?』と思うお客様もいるようですが……」
総務省統計局調査によると、2024年7月の米5kg(コシヒカリを除く国内産精米)の価格は全国平均で2411円。昨年同月の2046円から300円以上も上昇した。
また農水省の「米の需給状況の現状」を見ると、2023年産米の生産量は661万トン。対する需要量は702万トンだから、需要が大幅に上回ったことが分かる。さらに、物流や肥料、燃料コストの上昇が価格に転嫁された形となった。
農協と卸売業者
だが、米の価格が上がり続ける要素はこれだけではなく、「値段を決める過程」にも要因がある。米の専門店「つねもと商店」COOで米流通評論家の常本泰志氏が解説する。
「米の価格は、基本的に各都道府県の農協が集荷時に農家へ支払う『概算金(玄米60kgあたりの仮払金)』を基に決まっていきます。例年、需給状況や生産コストを踏まえ金額が算出されますが、今年は各農協の概算金が出揃う前に、卸売業者が動き出した。
とにかく量を確保したい一部の業者が、農協を通さず『これだけ出すからウチに卸してくれ』と、例年の概算金を大きく上回る額を農家に提示、直接買い付け交渉するようになったのです」