自民党の新総裁に石破茂氏が選ばれたが、いまだくすぶる裏金問題などもあり、自民党の先行きが明るいわけではない。そうしたなか、野党第一党である立憲民主党の新代表となった野田佳彦・元首相には政権交代を実現可能にする力が求められるが、そこに大きな懸念を示すのが、元内閣参事官で嘉悦大学教授の高橋洋一氏だ。「野田新体制は財務省が喜ぶだけ」と警鐘を鳴らす理由とは──。
「増税で政権を潰してしまった人」
小泉純一郎内閣で大臣補佐官だった高橋氏は、安倍晋三内閣や菅義偉内閣でも官邸スタッフを務めた積極財政の論客で、与野党に幅広い人脈を持つことで知られる。その高橋氏がこう嘆息する。
「野田氏は2012年に民主党政権を瓦解させた張本人。あえて言えば、『増税で政権を潰してしまった人』です。そんな人物を代表に選ぶなんて、立憲民主は選挙に勝つ気があるのか」(以下「 」内は高橋氏)
東日本大震災の半年後の2011年9月に発足した野田内閣では、復興財源を増税で賄う法案が成立。所得税と法人税が引き上げられた。さらに翌2012年8月に成立した社会保障と税の一体改革関連法によって、消費税率は5%から8%、さらに10%へと2段階にわたって増税される路線が敷かれた。
「当時の財務省は“3段跳び”を企んでいました。復興増税がホップ、社会保障のための1回目の消費増税がステップ、さらに財政再建のための2回目の消費増税がジャンプ、と。野田氏は財務相在任中(2010年6月~2011年9月)からその路線に乗り、首相としてそのすべてを実現させたのです」
個人的にも面識があるという高橋氏は「民主党政権が誕生する前はまともな政治家だった」と野田氏を評する。その後に豹変したというのだ。
「2009年9月に政権に入るまでの野田氏は、国民の税金の支出先に官僚の天下り法人がたかっていることを問題視して、『シロアリ退治をするまでは消費税は引き上げない』と訴えていました。ところが、鳩山由紀夫内閣で財務副大臣に就任したのが転機になった」