人が集まらない業界において、賃金が上がればその問題は解消するかというと、そうとも限らない。たとえば建設業では、公共事業を担う日額単価が12年前の1万3072円から上昇を続け、今年2万3600円と最高値をマーク。1万円以上単価は上がっているが、人気が殺到しているわけではない。
なかでも深刻なのは施工管理、通称「セコカン」だ。株式会社リクルートが公表している求人動向調査によると、施工管理の求人は2016年と比べて2023年には5.04倍に増加しており、未経験求人は同年比16.55倍と急増している。それだけ人手不足ということなのだろうだが、なぜ、そこまで人手が集まらないのか。現場のリアルな声を集めたところ、“お金じゃ割に合わない”人間関係に悩まされている若手社員も少なくないことがわかった。
上司や職人にゴマすり 間で疲弊する「4大卒」
都内にある電気設備系サブコン(※ゼネコンの下請け業者のこと)に勤めるYさん(30代・男性)は、大学では工学部で土木を専攻。第三種電気主任技術者や危険物取扱者乙種第4類など、在学中に取得した資格を活かせると思い、建設業を志望した。しかし実際には、「資格よりも人間関係重視」という現場に疲弊する日々を送っている。
「資格をすでに持っていたこともあってか、内定はとんとん拍子でもらえました。でも入社してみれば資格を活かしたりスキルアップできるような業務よりも、職人や上司のご機嫌取りばかり。
というのも、職人には無理な工期をお願いすることが多くなるので、仲良くしないと全体の工期に響きます。こちらが大卒だということで、最初から若干、色眼鏡で見られることもあって、なるべく低姿勢に出ることが必須になりますね。一方で上司からは職人を働かせるようにせっつかれますが、こちらも日頃から仲良くしておいたほうが融通がきく。板挟みで、どちらにもヘコヘコ頭を下げる状態の毎日で、精神的に疲弊しています」(Yさん、以下「」内同)