人生の最期を平穏に過ごすため、快適な状態で「そのとき」を迎えるため、体が動く元気なうちから最適な場所を探すという人は少なくない。前編記事では、超高級老人ホームに入居したからといって、幸せな終の棲家となるかどうかはわからないという事実を、実例を交えてレポートした。後編記事では自宅を「終の棲家」とした場合の落とし穴をレポートする。【終の棲家の落とし穴・前後編の後編。前編から読む】
「フルリフォームを行ったのが、間違いのもとでした」
住み慣れたわが家の環境を整え、終の棲家とすれば心安らかな最期が待っているかと言えば、そこにも落とし穴がある。介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さんが語る。
「慣れ親しんだ自宅で最期まで暮らしたいと希望する人は多いですが、“人間よりも先に家が寿命を迎えるケース”もある。古い家では水回りなどが維持できない可能性があるうえ、耐震補強が充分ではない場合も多い。自然災害の多い日本では、天災で自宅を失うリスクも想定しておくべきです」
リフォームを施して補強する手もあるが、安易な改修は悲劇を招く。
「子供の独立をきっかけに、フルリフォームを行ったのですが、それが間違いのもとでした」
そう話すのは、兵庫県の一戸建てに夫とふたりで住むBさん(75才)だ。
「廊下やトイレに手すりをつけ、浴槽は要介護状態になっても入りやすいように浅めにして、玄関にはスロープもつけました。
業者任せにした私たちも悪いのですが、完成してみたら手すりは太すぎてつかみづらいし、浅くなった浴槽では肩までつかれずに風邪をひきやすくなった。
いちばんの問題はスロープです。夫が骨折してしばらく車いすを使っていたのですが、スロープの幅が車いすよりも狭いせいで通ることができず、まったく意味がない。広げるにもお金がかかりますし、もっと慎重になるべきでした」