2024年のプロ野球はシーズンが終了し、タイトルホルダーの面子も確定した。11月26日、都内のホテルでは「NPB AWARDS 2024」が開催され、獲得した選手が表彰されることになる。ただ、両リーグで同じような成績を残してタイトルを獲得した選手でも、年俸あたりの活躍度、つまり“コストパフォーマンス”という観点では、大きな違いが生じることもある。
本誌・週刊ポスト(11月8日発売号)では、『データ・ボール』などの著書があるライターの広尾晃氏の協力のもと、一軍登板した投手348人と一軍出場のあった野手319人の年俸(推定、以下同)と成績からそれぞれ“コスパ”をランキング化した。打者では「1安打あたりの年俸」で計算をしている。タイトルを獲得した打者たちの数字を見ていこう(順位はコスパの「ワースト」ランキング)。
打撃のタイトルは6部門。セの首位打者はオースティン(DeNA)と近藤健介(SB)、最多安打は長岡秀樹(ヤクルト)と辰己涼介(楽天)、最多本塁打・最多打点は村上宗隆(ヤクルト)と山川穂高(SB)がともに二冠、最高出塁率はサンタナ(ヤクルト)と近藤、最多盗塁は近本光司(阪神)と周東佑京(ソフトバンク)が獲得した。
首位打者はセのオースティン(年俸4.35億円)が1安打あたり348万円(打者83位)、パの近藤(年俸5.5億円)が同401.5万円(打者72位)と近い水準になったが、他のタイトルでは違いが見られるものもあった。
ヤクルト・村上は“多少の活躍”ではコスパが悪い
たとえば、最多安打はパの辰己(年俸8000万円)が158安打で1安打あたり50.6万円(打者243位)で高コスパだが、セの長岡(年俸4100万円)はさらにその上をいって163安打で同25.2万円(打者290位)という違いになった。長岡は昨季、規定打席に達した打者で打率最下位という成績だったが、今季は8~9月に19試合連続安打を記録するなど上位打線に定着。飛躍の1年となったことが、コスパの数字にも表われた格好だ。そうした違いは、他のタイトルでも生じているケースがある。広尾氏が言う。
「33本塁打、86打点のヤクルト・村上と34本塁打、99打点のSB・山川はともにチームの主砲として二冠となったが、村上は1安打あたり491.8万円(打者63位)、山川は同220.6万円(打者129位)とコスパでは大きな違いが出た。山川も西武からの移籍で年俸3億円と高水準だが、村上は2022年に史上最年少で三冠王を獲って年俸6億円まで上がったことがそのまま違いとなっている。
年俸6億円までいくと、タイトルを獲る活躍をしてもコスパは悪いほうの位置になってしまう。そうなってくると、日本では球団が年俸を抱えきれないからメジャーに行かせるというパターンがほとんど。村上はメジャー志向があるとされ、ヤクルトとしても年俸をこれ以上積み増せないので、メジャーに送り出すしかないという結論になるのでは。米国では25歳未満はメジャー契約ができない決まりだが、村上は来年で25歳。ポスティングの移籍で球団に多額の譲渡金が入る状況となり、米国行きが現実味を帯びてきます」
年俸と活躍度をきめ細かく検証していくと、将来のメジャー挑戦のタイミングも見えてくるのかもしれない。
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