日本の物流を担い、「クロネコヤマトの宅急便」で知られるヤマトホールディングス(HD)が、赤字転落の苦境に喘いでいる。11月5日、ヤマトHDが発表した2024年度上期の連結決算は、売上高(営業収益)が前年同期比3%減の8404億円、営業損益は150億円の赤字に転落。2025年3月期の通期予想も見直され、営業収益、営業利益ともに4期連続で下方修正した。
背景には世界最大のネット通販事業者であるアマゾンとの関係に緊張が走っている事情がある。決算会見で栗栖利蔵副社長は「お客さんとの交渉で単価アップが見込めず、収益が追いつかなかった」と発言したが、このヤマトの収益を左右する最大の顧客こそがアマゾンなのだ。大手経済紙部記者が言う。
「今、ヤマトはアマゾンに対して荷物の運賃の『賃上げ』交渉の真っ只中だといわれています。この交渉が上手くいかなければ、残業規制を中心とする物流の『2024年問題』の影響もあり、ヤマトの業績は今後も厳しいものになっていくでしょう。また、仮にヤマトがアマゾンと決裂するようなことになれば遅配などが生じる『物流クライシス』に陥る可能性もある」
「心配するようなことじゃない」
岐路に立たされているヤマトHDの現状について元経営トップのOBたちはどう見ているのか。連続直撃した。元ヤマトHD社長の瀬戸薫氏(77)はこう語る。
「ちょっと今のことは分からないんですが、私の頃から言えば上期はいつもダメですから。そんなに心配するようなことじゃないかなと思いますけどね。(2024年問題の影響は)それはあるでしょうね」
瀬戸氏の後任として2015年までヤマトHD社長を務めた木川眞氏(74)は赤字の問題はアマゾンだけではないはずだと説く。
「(赤字は)アマゾンとの因果関係はないんじゃない? アマゾンとの取引は合意のもとに変化しているはず。だから今の決算が悪くなっているのは、物価高騰や人件費その他のコストが原因でしょう。それから、積極的にこれから成長しないといけない投資をしてコストが先行しているんだよ。(2024年問題への対応を)ちゃんとやっているが故に、コスト分が上乗せになっていると僕は理解しています」
宅配の運賃は消費者にとっても重要な問題だ。今後も両社の交渉の進捗に注目が集まる。別記事〈【アマゾンの荷物が届く流れを大図解】ヤマトとの価格交渉中に“自前の物流網が拡大 業績悪化に苦しむヤマトHD元会長に直撃「赤字はアマゾンと因果関係はない」の真意は〉では、ヤマトの値上げを求める交渉と対峙するアマゾンが何を考えて、どう動いているかをレポート。ヤマトHDの見解についても掲載している。