新型コロナウイルスの感染拡大によって、ネット通販を利用する人や頻度は右肩上がりに上昇。それと同時に、配送にまつわるトラブルも増えつつあるようだ。最近では荷物を手渡しせずに、玄関先などに置いておく「置き配」も普及しているが、宅配業者が勝手に「置き配」をして置荷物に問題が生じた場合、利用者はどのような措置を取るべきだろうか。弁護士の竹下正己氏が、実際の相談に回答する形で解説する。
【相談】
インターネット通販をよく利用しているのですが、先日、勝手に置き配された荷物が雨に濡れ、購入した洋服が濡れて汚れてしまいました。購入したサイトに「汚れた服を取り換えてほしい」とお願いしたところ、「宅配業者の落ち度なので取り換えられない」と言われました。今後、荷物が汚れたり、盗まれるなどの置き配トラブルが起きた場合は、送り主と宅配業者、どちらの責任になるのですか。(神奈川県・39才女性・会社員)
【回答】
インターネット通販による物品売買は、購入者とネット通販業者間の契約です。物品の引き渡し方法はネット通販で広告を義務付けられる事項に含まれておらず、通販業者に任されます。しかし、通販業者は自前で届けることができないので、購入者に引き渡す補助者として宅配業者を利用します。
その際、宅配業者の手違いで物品が届かなかったり汚損すれば、通販業者が売主としての義務を果たしていないことになり、購入者は、通販業者に対して損害賠償や代品の交換を請求したり、契約を解除して代金の返却を求めたりすることができます。
一方で、通販業者が宅配業者に荷物の宅配を依頼すると運送契約が成立します。運送契約の条件となる宅配業者の約款は、国交省が公表している「標準宅配便運送約款」に準じているのが普通です。そこでは、業者は、荷物を引き受けたときから、荷物の滅失または毀損についての責任を負います。そして、業者が自らに不注意がなかったこと(無過失)を証明しない限り、荷物の滅失または毀損などの損害賠償の責任を負うと定められています。
したがって業者の無過失が証明されない限り、宅配業者に損害賠償責任がありますが、これは運送契約上の責任ですから、責任追及できるのは、宅配を依頼した通販業者であり、荷受人である購入者は運送契約の当事者ではないので請求できません。