警察庁が発表した2024年1月から10月までのSNS型投資詐欺の被害は、約747億7000万円に上る。このなかには、SNS上で有名人を騙る広告から詐欺被害に遭ったケースも多くある。詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリストの多田文明氏が、SNS型投資詐欺の被害に遭った人物に話を聞いた。前編記事「100万円の貯金しかないのに1900万円の借金を背負い込んだ60代女性の後悔」に続き、後編記事では、「AIを使ったFXの自動売買でみんな利益が出ている」との触れ込みを信じて詐欺被害に遭った40代男性のケースを紹介しよう。【前後編の後編】
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警察庁が発表した2024年1月から10月までのSNS型投資詐欺の被害は、約747億7000万円と深刻な状況になっています。このなかには、SNS上に見られる有名人を騙るニセの広告から詐欺被害に遭ったケースも多くあります。
嶋田さん(仮名・40代男性)もその被害者の一人です。2023年の8月にメタ社のプラットフォーム・Facebookに出てきた広告から偽投資サイトに誘導されて1250万円の被害に遭っています。現在、被害者らはメタ社に対して偽広告被害弁護団が集団提訴をしていますが、嶋田さんも10月29日に埼玉地裁に提訴して、第二次の集団訴訟に加わっています。
どのようにして、嶋田さんは多額の被害に遭ったのでしょうか。そこには、Facebookに詐欺につながる広告が表示されたことに加えて、一般に使われているプラットフォームを通じて、偽の投資に誘う巧妙な手口がありました。
教えるフリをしながらこっそりと偽の投資サイトに誘導
SNSに出てきた広告は、「青汁王子」の愛称で知られる実業家の三崎優太さんと、同じく実業家の前澤友作さんの二人が対談するものだったといいます。それをクリックすると「成田」という女性とLINEで繋がるように促されます。その後に、「笹山幸太郎」なる人物が主催している「笹山金融塾」という投資先グループを紹介されて、嶋田さんは参加します。
「投資グループでの最初の話は、株式取引だったのですが、ある時、急に自社で開発したAIを使ったトレードができることをアナウンスされました。それに投資した方の書き込みがあり、『毎日自動で取引してくれて、利益が出ている』というのです」
2023年9月に、成田から個別に連絡があり「MT5(メタトレーダー5)を使って、AI活用の自動売買トレードができます」と誘われます。
「ネットで調べてみると、確かに、MT5は一般にFX取引などで使われているプラットフォームで、多くの人たちが使っているものでした。それで安心してインストールしてみることにしました」
しかし、ここには巧妙な罠がありました。嶋田さんによると「MT5自体は問題ないものでしたが、成田の指示で行った手続きのなかに、偽の海外取引所のURLとつなげるようなものが入っていたのです」
つまり投資取引にあまり知識のない嶋田さんに、正規のプラットフォームへの手続き方法などを懇切丁寧に教えるフリをしながら、こっそりと偽の投資サイトに誘導させるような悪巧みを実行していたのです。