「すごい壁打ち」には最初の導入が重要(イメージ)
リクルート時代から新規事業立ち上げに携わり、現在は年間1000回を超える対話=「壁打ち」を実践するコンサルタントの石川明氏。相手から的確な反応を引き出すためには、いかに具体的に課題や意図を伝えるかが鍵になるという。対話の質を高める「話の始め方」のコツと「反論しない」姿勢の重要性について、石川明氏の著書『すごい壁打ち』(サンマーク出版)から再構成して紹介する。《全3回の第3回》
「すごい壁打ち」は話の始め方で決まる
「すごい壁打ち」では、最初の導入が重要になります。具体的には、以下の3点を相手に明確に伝えることで、より実りある対話が期待できるのです。
【1】現在の状況
【2】壁打ちをお願いする意図
【3】対話への期待
すでにあなたは、これまでの壁打ちを通じて「自分が何に困っているのか」「どんなことを考えているのか」をある程度整理できているはずです。その上で、どこで思考が行き詰まっているのか、何を突破して次のステップに進みたいのかを相手に伝えることで、相手も的確な反応がしやすくなります。
「すごい壁打ち」では、最初の投げかけ方が重要になります。「頭の中にあることを素直に本音で」話す方法では、意図しない方向に話が進んだり、本題までに時間がかかりすぎてしまったりする可能性があります。
より効果的なアプローチは、あなたが直面している具体的な課題を、ストレートに伝えることです。例えば、次のような課題を伝えてみましょう。
「お客さんが本当に望んでいることは何なのかに自信が持てない」
「アイデアはあるが、他にも選択肢があるのではないかとモヤモヤ……」
「実際に進めていく上で、どんな障壁があるかが見えていない」
「社内で提案を通すとき、どんな論点が出てくるか予測できず不安」
ただし、質問の仕方にも工夫が必要です。「どう思いますか?」「どうしたらいいでしょう?」といった漠然とした問いかけでは、具体的な反応を得るのは難しいでしょう。なぜなら、あなたが時間をかけて解決できていない課題に対して、相手がいきなり的確な答えを出せる可能性は低いからです。
そこで、「今は確信を持てていないのですが、現時点で自分が考えているアイデアは……」などと伝え、その時点での自分の考えを具体的に示してみましょう。どんな相手でも、具体的な案や選択肢があった方が、意見が言いやすいからです。もちろん、新しい視点や発想を引き出すために「オープンクエスチョン」を使うこともありますが、状況に応じて使い分けることが重要なのです。
大事なのは、壁打ちの主導権は常にあなたにあるということです。最初の投げかけも、返ってきた意見への対応も、すべてあなた自身が決めなければ前に進めません。
つまり、壁打ちとは、自分が主導権を持ちながら、相手の知見も活用して思考を深めていく方法なのです。だからこそ、その時々の課題に応じて何から話し始めるかが大事なのです。