日本人は本当に「勤勉」なのか(イメージ)
長らく、漠然としたイメージだけで日本人は“勤勉”だといわれてきた。しかし当然、同じ社内でも“あいつは勤勉”といわれる社員もいれば、“勤勉”とはいい難い振る舞いをする社員もいる。そしてそうしたとき、「自分は一生懸命働いているのに、あの人はサボっていてズルい」──と密かに思う人たちがいるのも現実だ。
なぜ日本人は、働いていない人に文句を言いたくなるのか。『世界の一流は「休日」に何をしているのか』(クロスメディア・パブリッシング)の著者で、マイクロソフトで業務執行役員を務めた経歴を持つ越川慎司氏に話を聞いた。
日本人の国民性は「火山」に由来
僕は、日本人は勤勉ではないと思っています。たしかに先進諸国と比較すると、日本人の平均睡眠時間は少ないですが、労働時間も長いわけではない(※編集部注)。おそらくスマホを見ていたり漫画を読んでいたり、遊びに費やす時間の割合が多いのではないかと思います。
【※OECDが33カ国を対象に行った調査(2021年)では日本人の睡眠時間は7時間22分と最下位。各国平均は8時間28分だった。また、OECD「2023年の世界主要国の労働時間 国際比較統計・ランキング」によると、日本の平均1人当たりの年間実労働時間は1611時間と、カナダ(1865時間)や米国(1799時間)よりも短い】
日本人の睡眠時間は世界各国と比較して少ない(厚生労働省ホームページより)
では、なぜ「日本人は勤勉だ」とのイメージを持たれており、その弊害として「自分は一生懸命に働いているのに、あの人はサボっていてズルい」という不満が生まれるのか。これは日本人特有の価値観との見方もあり、その由来は「日本に火山があるから」という説があります。
たとえば、ヨーロッパの人が酪農や農業をする場合は、もともと肥沃な地であるために、大きな農機具を使って耕す必要がなかった。そのため、一次産業については家族経営で行う文化が根付きました。一方、火山灰が散り積もった島国である日本では、農業をするためには土を耕すにも大変な労力を必要とします。しかし、大掛かりな農機具は個人や家族ではとても高価で買えないので、「村」というコミュニティを作り、農機具を共有するようになったんです。
そうすると、農機具は使いまわせるし、さらには過剰に収穫した農作物を「村」の中で分け合って調整することもできる。「村コミュニティ」の中で協力し、生き残る術を獲得していったのが日本人の特徴といえます。