人生100年時代が現実化しつつあるが、長い老後には「保険」をかけておきたくなるもの。最近は90歳まで契約できる保険も登場し、シニア向けの保険市場が賑やかだ。だが病気に備えた「医療保険」は、高齢者になるほど保険料が高額になる。
「とくに“持病があっても入れる”などの触れ込みのシニア向け保険商品は通常より2~3割も割高で、コストパフォーマンスが低い」と指摘するのはファイナンシャルプランナーの森田悦子氏だ。
「たとえば60歳男性が加入する『入院日額1万円』の商品の保険料は月1万2000円、10年間で144万円ほどですが、病気になって1か月入院しても月30万円しか戻りません。仮に月数十万円の治療費が必要な大病にかかっても、健康保険の高額療養費制度などの公的サポートを使えば、一般的な収入の世帯なら月9万円ほどの支出で済みます」
しかもこの先、医療費抑制のため「入院の短期化」が進み、「入院日額」を払う医療保険は時代遅れになりかねないという。
認知症と診断されると一時金が支払われることで最近人気の「認知症保険」も、「拙速な加入は避けるべき」と森田氏は指摘する。
「将来は5人に1人が認知症になるとされますが、逆に考えれば、5人に4人は認知症にならない。仮に60歳男性が月7000円で終身の認知症保険に加入して80歳まで保険料を払うと168万円。5人のうち1人は一時金300万円を受け取ることになりますが、残りの4人は1円ももらえません。しかも医療費は高額療養費制度を使えば月9万円で済みます。保険加入の際は不安な感情に流されず、冷静に判断することが大切です」