人生100年時代が迫る中、長生きすることによって生じる「まさか」は相続で起きる。現在、60歳以上の高齢者世帯の平均貯蓄額は2384万円、4000万円以上の貯蓄を持つ世帯は全体の約12%にのぼる。これは持ち家など不動産を含めない金融資産だけの金額だ(2017年総務省家計調査)。
「今のうちに手を打っておこう」と相続税対策がブームになるのも自然な流れだ。
中小企業の元経営者Aさんは跡取り息子に非課税で贈与できる限度いっぱいの110万円を毎年贈与してきた。都内の自宅の評価額だけでも相続税の課税額を超えるため、預金はできるだけ非課税で渡しておこうと考えたからだ。
自分が死ぬまでまとまった金額を贈与すれば、かなりの相続税を“節税”できる。ところが、ここに“落とし穴”が待ち受けている。
Aさんが100歳になれば、息子は70代半ば。我が子に先立たれる「逆縁」の痛さ悲しさはたとえ何歳であろうと変わるものではないが、親が長生きすればするほどその可能性は高くなってくる。
そうなれば、残された孫は、父の財産と祖父であるAさんの財産をダブルで相続することになり、相続税負担が重くのしかかるのだ。「息子のため」の相続税対策が、皮肉なことに孫を苦しめてしまう。