「わたしはこれ以上がんばりません。定時で帰ります。お先に失礼します」──今話題のドラマ『わたし、定時で帰ります。』(TBS系)で、吉高由里子演じる主人公・東山結衣が胸を張って口にするセリフだ。
ウェブ制作会社のディレクターとして働く結衣は、過去に働きすぎて負ったトラウマから、残業しないスタンスを貫く。「絶対残業しない」をモットーに効率的に仕事をこなし、定時になるとさっと退社する。退社後に、行きつけの中国料理店でビールを飲むのが毎日の楽しみだ。
「長時間労働」や、男女間をはじめとするさまざまな「格差」など、働く女性が社会や職場で直面する問題をリアルに描いた本作。4月の放送開始直後から反響を呼び、ネット上では「共感できすぎて困る」「まるで私」といった女性の声が相次いだ。
昨今、連日ニュースで取り沙汰されている「働き方改革」。だが、働く女性の悩みや直面する壁に対して、本当に役立つ改革なのか──そんな疑問をこのドラマは投げかける。
そもそも「働き方改革」とは、誰もが働ける「一億総活躍社会」の実現に向けた、安倍政権肝いりの成長戦略のことだ。「働き方」評論家で、千葉商科大学国際教養学部専任講師の常見陽平さんが話す。
「“一億総活躍”というと聞こえはよいですが、この言葉には、女性とお年寄り、つまりこれまで労働市場にあまり参加していなかった人が働いて、日本経済に貢献してくださいという意味が込められています。少子高齢化や人口減少に伴う労働力不足で、働き手を増やさなければならないのです」