7月1日からスタートした相続のルール改正により、義父母の介護をしていた妻も「特別寄与料」を受け取れるようになった。新制度以前は、介護で泣き寝入りしていた妻たちの状況は大きく変わろうとしている。
愛知県在住の松原さん(54才・仮名)には、苦い経験がある。
「夫には弟がいるのですが、若い頃から仲が悪く、ほとんど連絡を取り合っていません。同居している義母が認知症を患ってからは、私が介護を担当していましたが、義弟はそのことを全然知りませんでした。義母が亡くなり、遺産相続となった時、私が介護していたことを切り出したところ、義弟はお礼の言葉どころか“カネ目当てだろう”と言いがかりをつけてきたんです。情けないやら、悔しいやらで涙が止まりませんでした」
このように、相続人に知らせずに“ひっそり”と介護を続け、義父母の死後に「介護していた」と主張するのは、揉める原因になる。相続人にとっては“後出し”のように感じられ、自分が相続する財産が減ることになるからだ。
当然のことだが、相続の権利を持つ人(相続人)が増えれば増えるほど、遺産分割は揉めやすくなる。介護や看病の「特別寄与料」は、“争続”のきっかけをつくりかねないものだという認識が必要だ。「円満相続税理士法人」統括代表社員で税理士の橘慶太さんが話す。
「義父母の生前から、介護の実態を周囲(相続人)に充分に理解しておいてもらうことが大切です。そのためには、介護の記録を日常的に相続人にメールしたり、盆暮れなど親族が集まる機会に、介護記録を見せておきましょう。親族にとっては“きちんと介護してくれているんだ”という安心感にもつながります」