最近よく目にするようになった「教育虐待」という言葉。これは教育熱心な親が、とにかく子どもに勉強をさせ、期待に沿うような結果が出ないと叱責したり、暴力を振るったりするようなことを表すもの。しかし、このような光景は最近始まったものではないようだ。
都内在住のYさん(40代男性)は、テレビ番組で教育虐待のニュースを見た際、T君という同級生のことが頭に浮かんだという。
Yさんが通ったのは、小中高一貫教育を売りにする都内の名門私立校。YさんとT君は小中高12年間、同じ学び舎で学んだが、Yさんから見たT君の中高6年間は、教育虐待と呼ばれても仕方ないものだったという。Yさんがいう。
「小学校時代のT君は、とても明るくて話も面白いので、クラスの人気者でした。運動神経も良く、運動会ではクラス対抗リレーのアンカーに選ばれたほどです。私は彼ととても仲が良く、学校で一緒に遊ぶだけでなく、誕生日会で自宅に呼ばれたこともありました」(Yさん。以下「」内同)
時には下らないイタズラをして、T君とともに先生に怒られたこともあったというYさん。ところが中学に入ると、T君の様子は一変する。
「中学に入ると、東大出身の医師であるT君の父親が、T君にも同じルートを歩むよう命令しました。そこでT君は、授業をマジメに受けるのはもちろん、休み時間も教科書や参考書を読むようになりました。その勉強ぶりは徹底していて、授業中に教師が無駄話を始めた時は、机の中から問題集を出して解いていたほどです。
さらに中学に入ったばかりの頃、遊びに誘おうと思い、彼の家に電話をして10分ほどおしゃべりしていたら、後ろから『いつまで電話してるんだっー!!』という父親の怒鳴り声が聞こえ、“二度と電話するまい”と思ったのを覚えています」