定年になっていざ「老後の資金計画」を立てるとき、生命保険の見直しを考える人は多いはずだ。
現役時代は「万が一」の時のために月1万~2万円を払って掛け捨ての生命保険に加入していても、雇用延長や再雇用で給料が下がると保険料の支払いが家計の負担になる。だが、見直しが60歳では遅すぎるのである。ファイナンシャルプランナーの深野康彦氏が語る。
「生命保険の死亡保障は原則、子供が社会人になって独立すれば必要ありません。奥さんのことを考えて生命保険に加入を続ける人も多いようですが、夫が厚生年金加入者なら万一の時は遺族厚生年金が支給されるし、住宅ローンの残債も加入している団体信用保険で全額払われるから心配ないでしょう」
親が30歳の時に生まれた子供なら、52歳の時に大学を卒業する年齢(22歳)になる。子供が巣立つ時が生保の“解約”のタイミングということになる。
ただし、生命保険には死亡保障に加えて入院時や病気になった時などに保険金が支給される医療特約をつけているケースも多い。
解約すれば入院保障もなくなるという不安がある。
「公的な健康保険や国保には月に支払った医療費が一定額を超えたら還付される高額療養費制度があるので、民間の医療保険(特約)を解約してもそこまで心配する必要はありません。
それでも心配という人は、怪我や病気で入院したときの万が一の医療費用の口座に預金を置いておく。高額療養費制度は収入が低いほど月に支払う医療費の上限も安くなるので、年を取って病気がちになっても100万円くらいの医療費預金があれば急場の費用は十分間に合うはずです」(深野氏)
月2万円の生命保険をかけているなら、解約して保険料分を4年間貯金すれば約100万円になる。52歳で解約した場合、56歳で“医療費預金”ができあがり、さらに60歳定年までに100万円蓄えを増やせる計算だ。
※週刊ポスト2019年8月2日号