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日本で「働き方改革」が実現できても「年金改革」はできない本当の理由

「年金改革」がなかなか進まないのには理由がある

「長時間労働の是正」「正規・非正規の待遇差の解消」などを柱とした「働き方改革」関連法が昨年6月に可決・成立し、今年4月から施行された。いま思えば、平成の最後になって「働き方改革」が一気に進んだ印象が強い。

 その一方で、年金をはじめとする「社会保障改革」は依然として抜本的な解決策が示されているとはいいがたい。むしろ金融庁の報告書に端を発する「老後資金2000万円不足問題」が浮上したことで、年金不安は再燃している印象だ。

 なぜ「働き方改革」は進み、「年金改革」は進まないのか。

 作家の橘玲氏は、新刊『上級国民/下級国民』で、その理由について、日本の人口動態をもとに明快に読み解いている。橘氏が語る。

「未来を予想することは困難ですが、ひとつだけ確実に予想できるのが人口動態です。大規模な移民や戦争などがない限り、先進国では死亡率や出生率は安定しているので、10年後、20年後、さらには半世紀先までほぼ確実にその動向を知ることができます。

 そのうえで2020年の人口動態をみると、団塊の世代(1947~49年生まれ)が後期高齢者(75歳以上)になりはじめ、労働市場から完全に退場することがわかります。人口が突出して多い団塊の世代は政治家にとって最大の票田で、正社員の既得権を破壊する『同一労働同一賃金』や『解雇規制の緩和』のような、彼らの死活的な利害につながる『改革』は口にすることさえタブーでした。その団塊の世代が現役を引退したことではじめて、『働き方改革』を進めることができたわけです。

 一方で、この先は団塊の世代が後期高齢者入りし、彼らが90代を迎える2040年には、彼らに次いで多い『団塊ジュニア』(1971~74年生まれ)が前期高齢者(65歳以上)になります。これが超高齢化のピークで、現役世代1.5人で高齢者1人を支えることになり、現行の社会保障制度が維持できなくなるのは間違いありません。もちろんこのことはみんなわかっていますが、だからといって政治家は、大票田である高齢者の年金を減らすような改革に手をつけることはできないでしょう」

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