「チェキ」の名前でおなじみのinstaxシリーズに、写真だけでなく、音声も記録できる『instax mini LiPlay』(富士フイルム)が登場し、話題を呼んでいる。「写真に音声とは?」と、開発の経緯を聞いたところ、チェキが人々を魅了し続ける理由が見えてきた──。
スマホカメラ全盛の今の時代にあって、チェキシリーズは売り上げを伸ばし続けている。2018年度の売上台数は1002万台を記録。発売してから20年間の累計では、およそ4500万台を出荷している。撮影した写真をその場でプリントできるインスタントカメラは、簡単に人に写真を贈ることができ、楽しさを共有できるため、今も老若男女に愛されている。
そうしたインスタントカメラには、まだまだ人々を楽しませるための可能性がある──そんなコンセプトで新商品の開発はスタートした。
目指したのは、単なる機能の追加ではなく、チェキ自体を次のステージに導くような商品だった。
開発担当者が注目したのは、人間の「五感」。今までチェキを使った時に働かせていた「視覚」「触覚」のほかに、「聴覚」に訴えかけてはどうかと考えた。写真に音声情報をプラスして、撮影時などに吹き込んだ音声を聴けるようにしようというのだ。音声情報をどのような形で搭載するか、検討がはじまった。
チェキが今まで多くの人々に受け入れられてきたのは、操作が簡単であるという部分が大きい。画像自体にデジタル情報を付与できるAR機能を使うと、撮影した写真をそのまま読み取って音声を再生できるが、別途AR専用アプリをダウンロードする手間が必要になる。
そこで、録音した音声データをQRコードにし、スマホの標準カメラに備わっているQRコードのスキャン機能を使ってQRコードを読み込み、音声を再生できるようにしたのだ。
しかし、写真自体にQRコードが入ると、どうしても無粋な印象を受ける。これを解決したのは、写真に入れることができるフレームだ。
マンガのような吹き出しの中にQRコードを配置するようなテンプレートのデザインとして盛り込むようにしたのだ。これで、写真をもらった人はQRコードに自分のスマホカメラをかざすだけで音声を再生できる。