この秋、FX(外国為替証拠金取引)各社によるスプレッド縮小競争が再燃しており、ついに米ドル/円で0.1銭という水準まで登場する状況となっている。スプレッドとはFXトレードにおける買値と売値の差のことで、これが狭いほど、投資家も低コストで取引できる。
9月26日、ゴールデンウェイジャパン(旧FXトレード・フィナンシャル)が、「日本 No.1 最狭スプレッド挑戦計画」と銘打って、突然米ドル/円のスプレッドを0.3銭から0.2銭へ縮小した。0.3銭はここ数年の相場となる水準だったためインパクトは大きかったものの、同社はMT4と呼ばれる上級者向けの自動売買サービスの専業であるせいか、しばらくは他社が追随する様子は見られなかった。
ところが、約2週間経過した10月15日、楽天証券が期間限定キャンペーンとして0.3銭から0.2銭へ縮小することを発表、これが本格的なスプレッド競争開始の号砲となった。その日のうちにGMOクリック証券、外為どっとコム、DMM.com証券、YJFX!が立て続けに同様のスプレッド縮小を発表したのだ。
翌16日には、トレイダーズ証券も0.2銭に追随したが、なんとその日のうちに0.1銭という前代未聞の水準へと縮小。火付け役となったゴールデンウェイジャパンもこれに追随した。0.1銭まで縮小する業者は限られているが、0.2銭へと引き下げる動きはまだ続いている。
スプレッドとは、為替取引での買値と売値の価格差のことで、この差額がFX会社の利益となる。スプレッドは狭いほど投資家は利益を上げやすくなり、利用するFX会社選びの判断基準ともなるので、FX会社はこれまでもたびたびスプレッドを縮小する熾烈な競争を展開してきた。
FXが普及し始めた2000年代前半はスプレッドは5銭程度が相場だったが、3銭、2銭と各社が競って値下げを繰り返し、2009年にDMM.com証券が0.5銭というスプレッドを打ち出したことで競争はいったんピークに達した。
その後2012年にサイバーエージェントFX(現・YJFX!)が0.4銭に縮小したのを機に他社が追随し、現在はSBIFXトレードが少額の取引に限定して提供する0.2銭が最安値で、主要各社は0.3銭が主流という状態で落ち着いていた。
スプレッドは狭いほど投資家にはありがたいとはいえ、ここまで下がるとFX会社の収益が相当圧迫されることも考えられ、約定しにくくなったり、スリッページ(注文した価格とずれて約定すること)が頻発するような事態も考えられるので警戒も必要だ。令和の時代に再燃したスプレッド競争の今後の行方に注目したい。
文■森田悦子(ファイナンシャルプランナー/ライター)