「住みたい街」ランキング上位の常連、武蔵小杉(神奈川・川崎市)の台風被害は“街全体の評価”を一変させた。
街のシンボルであるタワーマンションの浸水被害は「災害に弱い街」を印象付け、住民は長期間にわたって不便を強いられている。風評による資産価値の下落を危惧する声もある。
水害といえば、過去には東日本大震災で千葉県の浦安市も大きな被害を受けた。もともと海だった場所を埋め立てて造成した土地が、激しい揺れによって液状化現象に見舞われた。そのため、浦安市の一部では、地価が一時約40%も下落するなど、資産価値が大幅に失われた。
不動産鑑定士の藤田勝寛氏によれば、武蔵小杉では大幅な資産価値の下落は発生していないが、被害のなかった他のタワーマンションに暮らす住民からは懸念の声も上がった。
「けっこう頑張ってローンを組みましたが、他人事ではない。風評被害が収まらなければ売却もままならない。うちには小さい子供もいるし、ローンが半分以上残っている。不安は募るばかりです」(40代男性)
今回の被災で、30分以上かけて階段を上がっていたという70代男性は、こうこぼした。
「高層階の眺めはすごくて気持いいんだけどね。でも、階段はさすがにきつかったなあ。家内は膝の状態があまり良くないし、少し落ち着いたら部屋を貸し出して、同じ市内で戸建てを借りようかとも考えているけどね。管理組合は『風評被害を防ぎたいので、マスコミに話はしないでほしい』と言うけど、実際、電気も水道もやられたわけだしね」