かつてマイホームの購入は憧れの対象だった。しかし、終身雇用制度が崩壊し、人口の減少や空き家率の急増が予測される現代においては、リスクと捉える風潮もある。また、相次ぐ災害が起こると一瞬にして住む場所も資産も失ってしまう持ち家のリスクも、あらためて認識され始めた。そんななかでも、家やマンションを購入する20~30代の若い世代がいる。彼らに賃貸ではなく、あえて持ち家を選んだ理由を聞いてみた。
「節税効果」と「資産価値」
30代前半の会社員・Aさん夫婦は、ともに上場企業で働いており、世帯年収は約1500万円。昨年、35年の変動金利のローンを組み、都内一等地の駅から徒歩8分、70平米のマンションを7000万円で購入した。夫婦共同で名義人となって返済する「ペアローン」だ。
Aさんの場合、優先したのは物件の「資産価値」だった。
「マンションを購入するまでは、隣駅にある約50平米の物件に、年間200万円の家賃を支払っていました。このまま10年住み続けて、家賃を計2000万円払うことも考えましたが、人気の地域にマンションを買えば、購入価格から2000万円下落することもない。今後数年での資産価値を試算した結果、収支ではプラスで、十分に『売り抜ける』ことが出来ると判断したので、購入を決意しました」(Aさん・以下同)
住宅購入を後押ししたのは、節税のメリットも大きかったという。
「『住宅ローン減税』もあり、税金が一部還ってきます。我が家の場合はペアローンなので、夫婦ともにローン控除を受けることができるのは大きい。賃貸だとそうした節税効果を享受できないうえに、資産も手元に残らない。賃貸生活のメリットは少ないのではないでしょうか」
賃貸では実現できない、自分らしい部屋の追求
理想とする住環境を追求した結果、中古マンションのリノベーションに行きついたというのは、20代後半の男性会社員・Bさん(独身)。総予算4000万円で、都内に60平米のマンションを購入した。
「最近では『DIY可能』な物件も増えていますが、やっぱり賃貸だと、退出時に元の状態に戻す『原状回復義務』が発生する物件が多い。壁や床材が理想の色でなかった場合でも、オーナーの承諾なしにはリフォーム出来ません。『自分らしい生活ができる家』に住みたいと考えた時、マンションのリノベーションに特化している専門業者に行きつきました。新築マンションを購入するよりはコストも抑えられるし、間取りや内装、家具のオーダーメイド対応までも柔軟に行える。賃貸物件にはない自由度があって、満足しています」