ある夕方の都内の回転寿司チェーン店を訪れた70代の男性は、その混雑ぶりに驚いたと語る。
「平日の早い時間なら空いているだろうと妻と出かけたら、5時の時点でほとんど席が埋まっていた。私たちは待たずに入れましたが、30分後には満席で順番待ちの列ができていた」
回転寿司は、10年以上にわたって業績右肩上がり。飲食業界の中でも稀有な業態だ。「御三家チェーン」と呼ばれる「スシロー」「無添くら寿司」「はま寿司」に、業界4位の「かっぱ寿司」が追随し、全国には4200超の回転寿司店があるという。
消費者に受けている最大の理由は「1皿100円」という低価格とわかりやすさだろう。回転寿司は外食産業の中でも「原価率(価格に占める材料費の割合)」が高い業態として知られている。著書に『回転寿司の経営学』(東洋経済新報社刊)がある評論家・米川伸生氏が指摘する。
「他ジャンルの飲食店の平均原価率は30%以下が当たり前ですが、回転寿司店は生鮮食品を扱うため、原価率は50%程度と高くなる」
それでも回転寿司店が儲けを出し続けられるのはなぜか。『お店がバラせない「儲け」の秘密』(宝島社刊)の監修者で、調達業務研究家の坂口孝則氏が解説する。
「回転寿司の客単価は1100円程度とされます。その中で原価率の高いネタと低いネタをバランスよく食べてもらうことで、全体の原価率を下げて利益率を上げる『粗利ミックス』という手法を採っている。
客は原価の高いネタを100円で食べて満足し、店は原価の安いネタをうまく提供して儲ける。このビジネスモデルにより、回転寿司店は外食産業の中でも堅実な成績を出せる業種と言われています」