住んでみたい街の理想と現実には、得てして大きな差があるものだ。憧れのあの街は果たして本当に素敵な街なのか? まったくノーマークだけど、実は住みやすい街は? 今回は「八王子」(東京都八王子市)について、ライターの金子則男氏が解説する。
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首都圏には大宮と浦和(埼玉県)、松戸と柏(千葉県)、高崎と前橋(群馬県)など、“因縁のライバル”とでもいうべき関係の街がいくつもありますが、東京多摩地区の立川と八王子もそのひとつ。互いに「多摩の中心地はこっち」と、覇権を争ってきましたが、近年は立川がやや優勢な印象です。2012年には「そごう」が去り、百貨店が消えた八王子ですが、このまま立川に差をつけられてしまうのでしょうか?
鉄道はJR中央線、八高線、横浜線、さらに少し離れて京王線の京王八王子駅があり、中央線と京王線の2つの経路で都心に向かうことができます。首都圏に雪が降るとテレビ中継が八王子駅前から行われるので“すごく遠いところ”と思われがちですが、京王線なら新宿までたったの370円。JRでも490円で新宿まで行けます。京王八王子は始発駅なので、座っての通勤も可能。中央線も始発列車があるので、こちらでも座って通勤することができます。
道路状況は悩ましいところです。駅周辺には国道16号と20号(甲州街道)と、東京近郊を代表する2本の主要国道が通っていますが、どちらもなかなかの混雑ぶり。中央高速の八王子インターも駅からは微妙に距離があり、週末などは時間が掛かります。ただ、圏央道の開通により、高速道路の利便性が飛躍的に向上し、行動半径が一気に広がりました。バス路線も大変充実していますが、車があればレジャーや買い物など、楽しみは何倍も広がるので、ぜひとも車は欲しいところです。
「買って住みたいランキング」は2位
ある時期までは、立川など歯牙にも掛けなかった感のある八王子ですが、駅前の賑わいで言えば、現時点では立川に軍配が上がりそうです。立川には伊勢丹と高島屋、駅直結の商業施設「グランデュオ」があり、少し歩けばIKEAやららぽーともあります。
ただ、八王子も指をくわえて立川の発展を眺めているわけではありません。そのひとつが南口の開発です。八王子駅周辺は、北側が飲食店、オフィス、商業施設、公的施設などでにぎわう一方、南側にはほぼ何もなく、南北の賑わい方の差が強烈でしたが、10年ほど前に商業施設も入るタワマンが完成し、さらに複数の商業ビルがオープンして、南口にも活気が出てきました。