カレー専門店とからあげ専門店の「からあげカレー」をデリバリー注文したら、盛り付けも、容器も、味もまったく一緒。調べてみると、店舗の住所が同じだった! でも、値段が微妙に違う……。なぜこんなことが起こるのか、フードデリバリー業界の奇々怪々の実態をレポートする。
東京・杉並区を南北に走る幹線道路「環七通り」から一筋入ったところにある商店街。午前9時、ほとんどの店がまだシャッターを下ろすなか、駅にほど近い雑居ビル1階の居酒屋「A」の前に、大きなバッグを背負った10人弱の若者が集まっていた。オンラインフードデリバリーサービス「ウーバーイーツ」の配達員たちだ。
「Aってすごい人気店だよな」「おれなんか、昨日6回もこの店から配達したよ」
配達員たちはそう“情報交換”しながら、次々に品物を受け取り、去っていく。とはいえ、Aは揚げものが100円ほど、生ビールが400円ぐらいで、座敷、テーブル、カウンターを備えるごく平凡な大衆居酒屋。どうしてこんなに人気なのか。
《Uber Eats配達員の方へ いつも配達お疲れ様です! 上記店舗はココです!》
Aの店先に貼られた一枚の紙。それが“人気”の秘密を解くカギだ。
記された「上記店舗」の数は実に14店舗。からあげ専門店、丼専門店、カレー専門店、ハンバーグ専門店、握り寿司専門店、マグロ丼専門店といった“専門店”を謳うものから、韓国屋台、野菜研究所に至るまで、ジャンルはさまざまだ。
ウーバーイーツの注文サイト上では、14の店舗は別個の店であるように見える。しかし、料理はすべて居酒屋「A」のスタッフによって同じ店舗で調理され、配達される。
「このように、ウーバーイーツなどデリバリーサイト上のみに存在する店を『ゴーストレストラン』、またの名を『バーチャルレストラン』といいます。Aのように実店舗を営業する傍ら出店するケースや、マンションの一室などキッチンのある場所で実店舗を構えずに出店するケースがあります。1つの場所で10以上のゴーストレストランを展開する場合も少なくない」(飲食業界に詳しいジャーナリスト)