米大統領選で民主党のジョー・バイデン氏が当選を確実にしたことで、日経平均株価は2万5000円台に達し、29年ぶりにバブル崩壊後最高値を更新した。米国のダウ平均も大幅高となるなど「ご祝儀相場」が広がっている。
ただし、経済アナリストの森永卓郎氏は、「現在の株高は、大統領選の混乱が終焉することをチャンスととらえた投資家により、株式市場が“鉄火場”と化したことが大きな要因。あくまで一時的な株価上昇にすぎない」という。
ひとときの株高のあとには、バイデン氏が打ち出す政策によって計り知れない打撃を受ける日本企業が続出するかもしれないのだ。
バイデン氏の“標的”となることが懸念される企業を考える上では、まず同氏のマニフェスト(政権公約)を知る必要がある。
バイデン氏が最も力を入れるのは「環境政策」と見られる。トランプ大統領は地球温暖化対策の国際的な枠組みである「パリ協定」を離脱し背を向けてきたが、バイデン氏は協定復帰を表明。脱炭素社会の実現に向けて大規模な投資を打ち出す見通しだ。『経済界』編集局長の関慎夫氏が指摘する。
「バイデン政権下では、環境汚染物質を排出しない電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)以外を環境対応車と見なさなくなる時期が早まる可能性が高い。そうなると、トヨタ自動車のハイブリッド車は、エコカーとして優遇されなくなるリスクが出てくる。
コロナ禍でも好業績で、今期の営業利益1兆3000億円を見込むトヨタにとって、曲がり角になりかねない。EVで先駆的な役割を果たしてきた日産自動車も、いまや米テスラの足元にも及ばず、バイデン新大統領就任が自動車大国・日本の分岐点となる可能性が高い」