親の死後に発生する相続の手続きには期限がある。相続税を払う必要がある場合、被相続人の死から10か月以内に税務署で手続きをして納付しなければならない。だが、相続人のうちの誰かが相続税を滞納したら……? 『週刊ポストGOLD もめない相続』より、共同相続人が相続税を払わなかった場合にどうなるのか、相続実務士の曽根惠子氏に解説してもらった。
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愛知県在住の50代男性Aさんは、兄の相続税滞納というトラブルに悩まされている。
「今年初めに父が亡くなったのですが、兄が相続税を払えないといって滞納しているんです。最終的に、その滞納分は誰が払うことになるのでしょうか?」
残された遺産の総額が各種控除を差し引いたあともプラスとなる場合に、相続税は発生する。相続人が複数いる場合は、遺産分割協議や財産価値の計算を済ませたうえで、被相続人が亡くなってから10か月以内に申告・納付をしなくてはならない。それぞれの納付額は相続した割合などによって変わってくるが、財産が不動産ばかりで現金を相続しなかった場合などは、税金の納付が難しくなる事態もあり得る。
夢相続代表取締役で相続実務士の曽根惠子氏は、「このAさんのようなケースでは、基本的には相続人の連帯責任になります」と説明する。
「滞納する人がいれば、他の相続人に負担が回っていくということです。ただし、いきなり回ってくるわけではなく、本来払うべき人の財産差し押さえや不動産の物納という方法があります」(曽根氏)
まずは滞納した本人に督促状が届き、それでも相続税が支払われない場合に、他の相続人に督促状が回ってくることになる。Aさんの兄が督促に応じない状況が続いた場合、Aさんの家にも督促状が届くわけだ。
家族で話し合うなどして早い段階で滞納している本人が相続税を納付できれば、問題は解決できるが、それがうまくいかなければ、最終的には財産の差し押さえが待っている。ただし、順番としては滞納した本人の財産から差し押さえられるということである。