現役世代を悩ませる「高齢の親が住む実家」問題。親世代にとって、かつてマイホームは憧れでありステータスでもあったが、子供が独立し、高齢の親だけで暮らすようになると、今度は子供世代がその扱いに頭を抱えるケースも多い。特に団塊世代と団塊ジュニアの親子間で、そうした悩みの声が聞かれるようになった。広告代理店で働く40代の女性・Aさんもその一人だ。
「実家は駅から遠い新興住宅地にある一戸建て。車がないと快適な生活は送れず、うちにも車があります。ただ両親がともに70代になった今、いつまで車を運転できるかという問題が心配。そうでなくても、戸建てだと部屋数が多いぶんモノも多く、掃除も大変。防犯面も気になります。今後のことを考えると憂鬱な気分になります」
Aさんは3人きょうだい。1990年代、神奈川県のとある新興住宅地に家族5人で引っ越ししてきた。4LDK一戸建て、駅まではバスで20分(バス停まで徒歩10分)。山を切り開いた土地のため坂道が多く、駅までの道もアップダウンが何度もある。Aさんの母は、子供の送り迎えのために自動車免許を取得したという。
「一人ずつ子供部屋を与えたい」という親の考えから、間取りは4LDK。子供がそれぞれ独り立ちした後は、子供部屋は物置部屋および父親の書斎、シアタールーム状態と化し、今もモノが増え続けている。
住宅ローンはすでに完済している。しかし、築年数がかさんでくると経年劣化によるメンテナンス費用も大きな負担になってくる。
「数年前にガスコンロやバスタブなどは買い替えが必要になりましたし、外壁塗装もしていました。案外維持費がかかっているようで、持ち家なら老後も安心なんて言っていられません。こうしたメンテナンスを頻繁に手伝うのも、なかなか面倒です」(Aさん、以下同)