「JR発足以来最大の危機」──。東日本旅客鉄道(以下、JR東日本)の深澤祐二社長(66)はコロナ禍の経営状態をこう表現した。今年4月から9月までの半年間の中間決算は、2643億円の赤字。1987年の国鉄民営化以来、最悪の業績をどう挽回していくのか。深澤社長に話を聞く。
──本業の鉄道の落ち込みにはどう対処する?
深澤:航空会社の場合、飛行機の燃料代や空港の離発着料の負担が大きいので、減便すればある程度コストは減らせます。しかし、鉄道会社は減便で電気代こそ減りますが、全体的なコストは大きく下がりません。
そこで、ダイヤや運賃の見直しを行なうことで柔軟なコスト構造に変えていきたい。
8月から、早い段階でご予約いただければ新幹線運賃を5割引きにする商品「お先にトクだ値スペシャル」(ウェブの「えきねっと」会員限定で来年3月末まで実施)を販売しており、かなりの反響をいただきました。
また、今後は繁忙期・閑散期、時間帯別など、細かく運賃設定を変えていくことも考えていかなければなりません。
たとえば定期券を少し値上げさせていただく代わりに、オフピークの時間帯は思い切って運賃を下げていく。
昨年10月からSuicaの鉄道利用で「JREポイント」が貯まるサービスを始めていますが、今後オフピークにご乗車いただいた方には付加ポイントを付与する仕組みを導入していきます。
──来年春から終電を最大30分繰り上げることも発表された。利用者の生活や、繁華街の飲食店などへの影響が大きいのでは?
深澤:近年、終電の利用は減少しており、コロナ拡大でその傾向はますます強まりました。現在の終電の時間帯の利用者はコロナ前と比較して4割減となっています。
また、もうひとつの大きな理由が、深夜の保守・点検にかかわる作業員の労働環境改善です。鉄道会社はメンテナンスやホームドア設置などの工事を終電から始発までの間に実施しており、特に首都圏では終電時間が遅く始発も早いですから、作業できる時間帯が短い。作業時間をできるだけ長く確保し、かつ効率化を図ることで作業員の負担を軽減したい。そのため来春からの終電繰り上げをお願いさせていただきました。