相続トラブルを避けるため、準備しておきたいのが遺言書。公証役場でつくる「公正証書遺言」と自分で書く「自筆証書遺言」があるが、どちらで残す場合も、遺言を作成した思いや経緯を「付言事項」として書くことができる。いわば“自由記述欄”のため、法的拘束力はないが、『プロが教える 相続でモメないための本』(アスコム)の著者で相続終活専門協会代表理事の江幡吉昭さんによれば、遺言書をつくるうえでは、これこそが重要だという。
「公正証書遺言の場合、既定のページ数を超えると追加料金がかかります。費用を抑えるために付言事項を省く人がいますが、付言事項として、財産の分割について“なぜこの分配なのか”という意図をくわしく書いておくべきです。相続人の理解を得やすくなり、“争続”を避けやすくなります。遺産を渡さない理由をきちんと書いておかないと、必ずといっていいほどもめるのです。
ただし、いくら付言事項で意図を説明できるといっても、遺産の分配は遺留分を無視しないこと。場合によっては、遺留分侵害額の請求を起こされかねない。もらえない人に配慮するのが、相続と遺言のポイントです」
遺言書によって極端に相続額が少ないと、遺留分が主張できる。法改正により、遺留分を請求されたら金銭で支払わなければならなくなった。別掲図のように、分配の意図を自分の気持ちとして明確に書き記そう。ただし、感謝の気持ちや後悔まで、すべての気持ちを遺言書にぶつけるのは趣旨違いだ。