新型コロナウイルス感染拡大により、働き方が大きく見直されている昨今。会話時の飛沫によるコロナ感染予防のため、対面での会議や商談を減らした会社も少なくない。そうした中、法曹界においては、裁判官や依頼者との相談はどのように行われたのだろうか。弁護士の竹下正己氏が実際の相談に回答する形で、今年の回想と共に今後の課題を予想する。
【相談】
戦後初ともいえる国難を迎えた2020年。新しい生活様式が叫ばれ、コロナによって泣いた人、苦しんだ人など様々でした。そこで竹下先生にお尋ねしたいのですが、弁護士として、この1年をどのように過ごされ、何がどう変わり、来年はどんな社会問題が露呈されていくと予測しているか教えてください。
【回答】
コロナ後、裁判所に出かける機会が減り、リモートが増えました。緊急事態宣言中の裁判は、緊急案件を除き、完全ストップ。事件が滞留し、宣言解除後は新件の裁判予定がなかなか入らず、裁判官や相手を交えての協議も大半がリモートになり、事務所や自宅で対応しています。便利で身体もラクですが、モニターだけでは何となく心細い気がします。
依頼者との会議も、リモートが主流となっています。緊急事態宣言当時、生産停止による納期遅れの相談もあり、契約で債務の免責事由中に「パンデミック」を加える必要性を実感しました。
目を転じると、緊急事態宣言による消費の落ち込みで、小売業や飲食業が疲弊、これまでなかった伝染病倒産が起きています。仕事のスタイルも様変わり。在宅勤務が定着し、不必要なハンコの廃止や電子契約の普及にも繋がっています。オフィスワークが減り、労働者は時間や場所を問われない代わりに、成果が求められる厳しい雇用条件になる可能性もあります。