緊急事態宣言は11都府県に拡大し、コロナ禍は1年経って正念場を迎えている。感染防止のためにテレワークや飲食店の時短営業が効果的なのはもちろんだが、それによって収入や職を失う人たちに対する補償や支援が不十分であることも衆目の一致するところ。
なかでも「感染の温床」とやり玉にあがっている「接待をともなう飲食店」、つまりクラブやキャバクラなどの水商売は壊滅の危機にある。そうした店で客が支払う単価を考えれば、1日6万円の補償が焼け石に水であることは疑いない。そもそも水商売では午後8時開店の店が多く、「20時閉店」は休業と同じだ。感染防止が最優先のなか、声をあげることができずにいる水商売の苦境を、日本水商売協会代表理事、甲賀香織氏に聞いた。
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感染防止の観点からは、大きな危機感を持っています。だから、2度目の緊急事態宣言については、事前に経営者たちと協議してきましたし、そうなったら時短ではなく休業しないとコロナは抑えられないだろうと考えていました。だから、みんなが納得して休業できる具体策を考えようと話し合いをしていたところでした。お店の換気状態など、対策の実態調査にもみんな協力してくれています。
ところが、国や自治体の対応は昨年4月の緊急事態宣言の時と変わらない。これでは業界内でも8時閉店を守る店がある一方で、こっそり営業する店も出てくるでしょう。アンダーグラウンドな店や、そこで働く人が増えてしまいます。働く人を守るには、コロナ対策を最大限しながら営業するしかないのも事実なのです。
かつての「ザ・ホステス」みたいな煌びやかな生活をしている人は、とっくにこの業界から身を引いています。いま残っているのは、給料がうんと安くなっても、ここで食べていくしかないという人たちです。お店で稼げないならと、生きるためにパパ活やギャラ飲み、売春などを選ぶ人も出てくるかもしれません。
そもそも、営業時間が短くなれば、その時間にお客様は集中しますから、密集度はむしろ高くなります。補償もなぜ一律なのでしょうか。家賃が5万円のところも300万円のところもあるのに。家賃の何割とか、納税額から補償を決めるとか、何か策がないと休めないところが出てくるのは仕方ない。家賃300万円のお店には女の子も多く所属していますから、1日6万円もらってもどうしようもないんです。現場を見ないでルールだけ押しつけられているように感じてしまいます。