コロナ禍は、今まで見えなかったさまざまな本質をあらわにしている。夫婦関係もしかりで、自粛生活と在宅勤務の定着によって、会社に出かけて行き別々に過ごしていたからこそ覆い隠されていた夫の“本当の姿”に直面し、当惑する妻が増えているのだ。
自分はずっと家事をしているのに、夫は仕事が終わると何もせずテレビの前でゴロゴロ……。その乖離に耐えきれず、別れを選ぼうとする夫婦も多いという。大手企業がリモートワークを導入し始めた2020年3月頃から、離婚の相談件数は、1年前の同時期よりも3割増しに。統計上、例年に比べると離婚件数そのものは減っているものの、自粛生活において離婚届の提出を瀬戸際で思いとどまっているだけで、“予備軍”は増えているとの見方もある。
この“夫が家にいる”という状況は、遅かれ早かれどの夫婦にも“夫の定年”とともにやってくる。これから長く続くであろう第二の人生のために、いまから夫を教育し、家事をやってもらうようにするのが、妻の賢いやり方かもしれない。
とはいえ、おだててほめるなどいろいろ試しても「なかなか夫の家事が上達しない」と悩む妻は少なくない。定年後の夫婦関係に詳しい臨床心理士の西澤寿樹さんのもとにも「5才の子供ならまだしも、夫が食事の片づけをできたからといって、手放しでほめるのには抵抗がある」などと、妻たちの嘆きが届くという。
しかし、女性が考えるよりも男性にとって「家事」のハードルは高いようだ。家事研究家の佐光紀子さんはこんな話をする。
「『全国家庭動向調査』によれば1日のうち、女性の家事に費やす時間は男性の7倍に及ぶといいます。それを10年、20年と重ねていけば、“家事力”に雲泥の差が出るのは当然。いまから夫が妻と同じだけの技量を身につけるのは、かなり難しいことを念頭に置いた方が、無駄なイライラを感じずに済むでしょう」